Epilogue(64/64)
更地となった廃墟の奥、男は座り込む男を見つける。呼吸からしてその男は虫の息なのだろう。
「アハハ、やーっと見つけた♪」
「………………………」
廃墟と化した建物に反響する、白い髪を持つ男の声。壁に背を預け座り込む黒髪の男はそれを見咎めはするものの動く様子はなかった。否、動けないと表記するのが正しいだろう。
「君だろ?散々僕の部下達引っかき回したあげく次々と壊滅させてったの。でもまさか君がその犯人だとは思わなかったよ……………とはいえ、君はもうすぐ死んじゃいそうだね♪」
「……………く、ふっ。ははっ、ははははは!!」
「?死を前にして、狂っちゃった?」
白い男の言葉に呼応するかのように黒髪の男は笑い出す。口の端から血が流れるのを気にも止めずに。
「なるほど、確かに………この状況においては、あんたと同意見だよ」
黒髪の男はそう呟く。が、それは目の前にいる白い男に対して言った言葉では無いようだ。
「………分からないなぁ。君、何が言いたいの?、っ!?」
突如、何かが這い寄る感覚が彼を襲った。後ろに飛び退き回避するが、どうやら彼を狙ったものではないらしい。男の方を見れば、広がる混沌とした………闇。地面に広がるその闇の窩は、やがて男を呑み込み始めた。しかし男がそれに抗う様子はない。
「流石に、この状況で……屍を遺そうとは思わない…………さて、白蘭だったか。1つ、忠告してやるよ」
そこで切り、再び口を開く。そんな中でも男の身体はどんどん沈んでいく。
「二度は、無ぇぜ」
それだけ言って男は消えた。辺りを静寂が包み、まるで最初から白い髪の男しかいなかったかのように錯覚させる。
「………帰ろっ♪」
その場を去る男の足取りは軽く、その表情は氷のようで。
残されたのは、今にも崩れ落ちそうな廃墟だけ。
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