リング覚醒(60/64)
沢田少年の前に現れた金髪の男。その額には橙色の炎が灯されていた。言わずと知れた、というかそっくりすぎだろ。兄弟ですって言われても違和感無いぞ、これ。
「T世?ハハハ、からかうのもいい加減にしてくれる?そんな大昔のご先祖様をホログラムで投射するなんて悪趣味にも程があるよ」
どうにもこうにも白蘭は目の前の状況を認めたくないようだ。ホログラムを投射する機械が何処にも置いてないことに気づいてるだろうにそういうこと言うってことは、現状は相当認めがたいものなんだろうな。
『さあ]世、お前の枷をはずそう』
「枷を外す!?」
「そう…言ったのか?」
『今のボンゴレリングは、仮の姿だ。ある時より厳格な継承をするために2つに分割しボスと門外顧問の2人が保管することとなった』
「真っ二つに分けられた、ハーフボンゴレリングのことだな!!」
『だが分割できる構造を保つために同じく7^3のマーレリングやアルコバレーノのおしゃぶりに比べ、炎の最高出力を抑える必要があった………しかしもうその必要もない。お前にならこの指輪の本当の意味とオレの意志をわかってもらえそうだからな』
あ、これはちょっと取り出さないと熱くてやばい。ついでにマモンチェーンも取っとくか。しばらくすれば風の指輪の形状は変わり、立派な装飾の指輪になっていた。が、これ他の奴等とあんまり似てないんだけど。流石風の指輪……脅威のハブられ率だよなぁ、おい。と、その時初代と目があった。真っ直ぐにこちらを射抜く、全てを見透かすような目。俺こういう目苦手なんだけど…………。
『10代の時を経て、ようやく現れたか………期待している。全て、とは言わないがお前に――――風に、かかっているんだ』
え、何この意味深発言。訳分かんないよ、てか俺に何かかってんの。それくらいはっきりさせたって罰当たんないでしょ、何でそこで話終わらせんの!?つーかまさかとは思ってたけど本当に前任とか1人もいなかったんだな、風の守護者!
『]世、マーレの小僧に一泡吹かせてこい』
ボンゴレリングが原型に戻ったことで沢田少年の動きにさらにキレが生まれた。白蘭ともほぼ互角のようにも見える。ユニちゃんの方へ落ちてきた攻撃はとりあえず振り払うことにして、炎の供給が始まった……らしい。 正直なとこ俺はユニちゃんのやろうとしてることにあれこれ口出すつもりはない。まぁユニちゃんの意志を尊重して、とか理由つけようと思えばいくらでもつけられるけどそれ以前に命を賭けた覚悟をした奴ってのは何言っても無駄だからだ。これはもう俺の経験上確実に言える。絶対に何か言ったところで曲げないから、言って曲げる奴は命懸けの覚悟じゃないよ。殴っても曲げないから、こっちも覚悟決めて対応しなきゃいけなかったし。………が、ユニちゃんの炎が小さくなる。死の恐怖、か………。
「ユニちゃん、」
「多村…さん……」
「昨日言った通り、何も君が命を懸ける必要はない。たとえ君がこの状況を予知していたとしても、だ。予知の通りに生きなきゃいけない決まりもルールもないからね。平和な過去とか多くの人の命を救うとか言うだろうけど、ユニちゃんがそこまでしてやることはないんだよ。ただ君は今その選択が出来る場所にいるってだけ………だから君が選択しなくとも誰も君を恨んだり、ましてや憎んだりなんかしない。まぁ、ユニちゃんが自分のこと許せなくなるかもしれないけどね。………俺は、何も言わないよ。だから、君が……ユニちゃんが納得出来る選択をすればいい。後のことは………まぁ、考えなさんな。たぶんどうにかなんだろ」
俺に言えるのはこのくらいかね。彼女の覚悟は本物だし、あとは自分の思うようにやってくれたらいい。怖い……そうだよな、普通は死ぬの怖いよな………。俺はどっちかってーと死んだ後、どうなるかの方が怖い。また別の所で人生振り出しに戻されんのか、それがどんな世界なのか、あいつ等はいるのか……考え出したらキリねぇな。
「多村さん………もう、大丈夫です」
「……………そうか」
「ユニ!」
「みなさん…ありがとう」
再びユニちゃんの炎が大きくなる。出来れば、彼女が命を懸けなくてもいいようにしたかったなぁ………ほとんど傍観決め込んでる奴の言うことじゃないか。ただまぁ、あんまり手ぇ出すとどうなるか分からん、って俺も大概人のこと言えねーな。
「よし!今です!!」
どうやら結界の外で例の匣間コンビネーションとやらを発動してるらしい。こっちからも働きかけた方がいいんだろうか。………ユニちゃんを守ってた方がいいのかな。と、開いた穴からγが入ってきた。
「あんたを1人にはさせない」
「!!」
「!まさか、」
ユニちゃんがγ好いてたのは分かってたけど、相思相愛だったんか……あー、くそ、歯痒い。何かしら力持ってんのに、結局のとこ役に立たない。いつだってそうだ……何だかんだ俺は全く成長してないな。最期、ユニちゃんが心底幸せそうに笑って、
そして、2人は消えた。
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