赤色の光が綺麗だった。この建物の機関部なのかはし知らないが、透明な板で囲われた空間は機械に覆われている。どこを見ても、灰色の機械だらけだった。無数の管が天井を走り、床を這う。よくわからない四角い物体ばかりだった。何をする物かもわからない。そもそもここがどこなのかさえわからない。
導かれるままにここへ来た。
部屋には何もなかった。がらんどうの空間に靴音が響く。ルイはゆっくりと部屋の中央へ歩を進めた。上も下も灰色の無機物で埋め尽くされている。床越しとはいえ、その上を歩くというのは不思議な気分だった。
(やっと)
女の人の声が聞こえる。少し低めの落ち着いた声。ルイはぴたりと足を止めた。誰が自分を呼んでいるのか。そっと胸の石に手を当てた。
部屋の中央に位置する部分には「石」が据えられていた。床のその下、機械に囲まれて「石」が置かれている。赤い、大きな石。大人より一回りも二回りも大きな赤い石。ごつごつとした大きな石が床下に鎮座している。淡く柔らかい光を放っている。
(やっと帰ってきたのね)
優しい声が脳内に響く。ルイはそっと床に手を突いた。「石」に触れるように手を這わせる。
手を通って光が溢れる。透き通った赤い光がゆっくりと広がっていく。床下が赤い光で満ちていく。その光にルイは顔をしかめたが、それでも「石」を見据えた。
(ずっと待ってた)
「扉を」震える声で言葉を紡ぐ。「扉を開けて」
(昔、規則から外された二人がいたけれど。その子がまた帰ってくるなんて)
声が悠々とした調子で話す。赤い光が揺らめく。機械が赤く染まっていく。ルイは床を叩いた。こんなところで時間を食っている場合ではないのに。
「お願い、話を聞いて!」もうそんなに時間はないのに。
「駄目よ」不意に背後から声が聞こえた。さっきまで聞こえていた声と同じ声だった。「あなたに扉は開けない」
ルイは慌てて振り向いた。心臓が一度だけ痛む。つ、と息を吐く。息苦しい。早くこの空間から出たい。
燃えるように赤い髪をした女性が、ルイを見下ろしていた。
「ルアルローズに言われてきたんでしょう? でも残念ね。あなたにその資格はないのよ」
鳥がさえずるように女性は言う。感情のない冷えた声が頭上から降ってくる。赤い瞳が、慈愛を感じさせるような優しげな色を浮かべてルイを見ていた。