ぐしゃ、という醜い音がした気がした。
「違うだろ?」
赤毛の女の子はじっと立ったままだ。腰の辺りまで落ちた赤い髪が微かに揺れている。どこからともなく冷たい風が吹き込んでいた。わずかに響く機械の音が、その子が人間ではないのだと証明している。機械とは思えないほど精巧に造られた女の子。傍目では機械だとわからない精巧さに吐き気がした。世界は、人間のものなのか機械のものなのか。
「お前の名前は」
言うな言うな言うな。私はもうその名を捨てたのに。
ぴしりと彼の頬に切り傷が出来る。彼はわずかに顔を歪めただけだった。鮮血が滲み、頬を流れていく。まるで涙のように。気持ちが悪い、痛い、苦しい。
胸が、痛む。熱くてたまらない。
「……どうして」
ひたり。彼の手が頬に触れて。心臓が締め付けられるように痛んだ。伸ばされた手に在る、緑色を湛える石が目に入る。手首に存在する忌々しき輝石。自らにも在る赤い輝石が、胸が、痛みを訴えてくる。存在を主張している。
言うな。その名はもう存在しない。きっとあのとき、この石を手にしたときに彼女は死んだのに。