笠松×年上彼女









「ゆーきお、」

「、は...?」



いつも通りの放課後練習、いつもと違うのは彼女がこの体育館にいることだ。



「な、んで此処にいるんだよ!」

「母校に来ちゃだめ?」

「だめ、じゃねぇけど...」

「久しぶりにみんながバスケするの見たかったんだよ」

「....」

「それに幸男のキャプテンが見たかったんだもの」

「....」

「今日、部活見てっちゃだめ?」

「〜あぁっ、もう勝手にしろ!!」


そう言って笠松は不機嫌そうに監督のほうに行ってしまう。


「こんにちは、先輩」

「久しぶり、森山くん」

「良かったんですか?笠松、行っちゃいましたけど」

「うん」

今のは照れてるだけだから大丈夫、そう言って真っ直ぐ笠松の方を見ている先輩。

今のやり取りは3年間ずっと部活で一緒に居た俺でも怒ってるか照れているのか区別しずらい場面なのに、”照れている”と断言できる先輩はさすが、といった所だ。


「しばくぞ!!」

なんて大きな声が聞こえてきて、そう怒鳴られた本人の黄瀬がコッチにやってくる。


「か、笠松先輩、今日機嫌悪いっスね、何かあったんスか...??」

後輩目から見ても、やっぱり笠松は不機嫌なようだ。

「先輩、やっぱり笠松怒ってません?」

「うーん、ちょっと怒ってるねぇ」

それでもなお、笑顔を絶やさない先輩。
俺が言うのもなんだけど、貴女の彼氏怒ってるんですよ?
いいんですか、笑ってて。

「笠松先輩の彼女さんっスよね?初めしてっ、黄瀬涼太っス!」

「はじめまして。幸男の彼女で、海常バスケ部元マネージャーです」

さらに先輩は笑顔で黄瀬と握手。
そして此方を見る笠松。

現役の頃からこの人がフリーダムな人だとは知っていたけど、さすがにこれは見てるこっちがハラハラするぞ。

「森山くん、幸男怒ってると思う?」

コソっと俺に耳打ちしてくる先輩。

「機嫌悪いとは思いますね」

笠松見てる。超見てる。
これが原因でもっと機嫌悪くなるんじゃないか?

「キャプテンが機嫌悪いと、困る?」

笠松の方をチラリと見てもう一度俺の耳元で話す先輩。

「はい、それはもう困りますね」

俺的には美味しい展開だけど、もうそろそろ離れていただかないと俺の人生が危ない。
笠松に視線だけで殺されそう。

「じゃーあ、ちょっとキャプテンの機嫌直してくるね」

別に幸男、怒ってる訳じゃないんだけどねぇ、とまだ笠松が照れてるだけだと言う先輩。

そのまま笠松の方へ。
さすがに笠松が先輩に向かって手が出るなんて無いだろうけどどうなるのだろうか。

先輩は笠松の目の前に立つと、両手を握ってじっと笠松を見つめる。
その後先輩が小さく何かを言って、笠松が徐々に赤くなりだす。

赤くなった笠松を見てケラケラ笑いながら先輩は最後に笠松の耳元で一言。


しゃがみ込んで耳まで真っ赤にしてる笠松とこちらを振り返り、誇らしげにピースしてる先輩をみるとこの言葉が相応しいんじゃないだろうか。


笠松KO、勝者先輩。



先輩、こちらに戻ってきて一言。

「幸男って普段なかなか嫉妬してくれないの」


計画通り、ってことですね先輩。

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