小説 | ナノ
 ”いつも通り”を演じるいつものわたし


ダイヤのA










「御幸くんと別れてよ!」






朝、隣の隣のクラスの女の子に呼び出されて今はお昼休み。校舎裏で涙目の女の子と苦笑いのわたしが向き合っている。

「あ、あのー、わたし、」

「いやよ、言い訳なんて聞きたくないっ」

いや、聞いてよ。

「ミョウジさんはさぁ...そりゃ可愛いと思うけどさぁ...!!」

けどさぁっ!と泣き出してしまった彼女

念のため言っておくと、私は御幸と付き合ってません。

御幸と私の関係なんてクラスが同じでちょっと仲良いくらい。
しかも御幸と話してる時って授業中以外は大体倉持もいるし。

「ミョウジさんは何で御幸くんなのよぉ...」

彼女は泣きながらも私の目を真っ直ぐ見つめてくる。

彼女のその目が、
彼女が本気で御幸のこと好きなんだ、と私に語りかけているようで何とも言えない気持ちになる。

「ミョウジさんには他にもいるじゃない、なんで御幸くんなの?」

”なんで御幸くんなの”

そんなの私が聞きたいよ。

御幸なんて性格悪いし、私のこと女扱いなんて全くしないし、むしろ私のこと男友達だなんて思ってるんだと思う。


それでも好きだ、と思ってしまう。


御幸が笑ったとき、勉強してるとき、話してるとき、野球をしてるとき、ご飯を一緒に食べたり、ふざけてクラス全員でバスケをした時とか。
御幸の些細な行動にだって反応してしまうのだ。

御幸の事が好きなんだってすぐに気づいた。

だけど気持ちを告って彼の怒った顔とかふざけた顔とか笑った顔とか。
彼が見れなくなる事がたまらなく怖かった。

これまでも彼女のような子に言われた事がある。
”御幸くんと付き合ってるの?”
”ミョウジさんなら御幸くんじゃなくてもいいじゃない”

彼女たちは皆、本気で好きなんだ。
実際に私と話した後御幸に告白した子も何人もいるって知ってる。


本気で御幸の事が好きって、大好きなんだって。

私だって御幸の事が好き、好きなんだけどこの気持ちを告う勇気も予定も無い。


だって告える訳ない、怖い。






結局何も答えられないまま、すぐに予鈴が鳴った。
彼女は最後に、”ミョウジさんが悪いわけじゃないのに呼び出したりなんかしてごめんね”なんて言ってその場を去って行った。

影でコソコソ悪口を言ったりするんじゃなくて私に直接こうやって言ってきた彼女たちは、本気故の行動なのだ。

それなのに、あんな彼女たちを見てきても私は何事もなかったかのように繕って教室に戻る。


それでいつも通り御幸が”おかえり”だなんて言うから、私もいつも通り”ただいま”と返すんだ。




”いつも通り”を演じるいつものわたし



君を好きになる度に私はわたしを嫌いになっていく。
いっそのこと、君を嫌いになれたらどれだけ楽なのだろうか。



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