小説 | ナノ
 君に贈る言葉


おおきく振りかぶって
初恋が君で良かった と同じ主人公












「矢野!あいつ来てんぞ」

「あっはい、分かりました。ありがとうございます」


高2の冬、いつもの練習を終え夕食時。
監督にナマエが来てると聞き、玄関口に向かう。

「川島くん程じゃないよ」

「いやいや!絶対ミョウジの方だからね?!」



ナマエと、公?

ナマエがちょっと不機嫌で
公はすげー焦ってる。

「お前ら何してんの?」

「あ!ヤノジュン!!ちょっとヤノジュンからもミョウジに言ってやってよ!」

「は、何を?」

「絶対矢野は川島の事の方が好きだって!!」

は?

「だって呂佳さん言ってたもん、
矢野と川島は良いコンビワークであいつら自身すごく仲が良いから...
…あいつらデキてるんだろって」

ナマエは桐青に入学したからコーチと面識がある。
おそらくコーチはこいつに変なこと吹き込んで反応を楽しんでるだけだろう。


つーか男とデキてるとか嫌だわ、割とマジで。

「そんなわけねぇだろ、気持ちわりぃ」


公に先に戻ってるように目配せしてから目に涙を溜めて下を向いてるナマエに目線を合わせる。

「ナマエ、」

「...ごめんなさい、こんな事言うつもりも矢野を困らせるつもりもなかった」

「...やっぱり不安か?」

ナマエの目が不安そうに揺れた。

俺は寮だし、俺からナマエに会いに行ける事なんて滅多にない。
だから週に一回の電話と、ナマエが会いに来てくれるときが唯一、こいつと話せる機会だ。

「ごめんね、めんどくさいよね、今日は一旦帰るから川島くんにも謝っ...!!」

謝っといて、
そう続くはずだったナマエの言葉は俺に引っ張られて消えた。

「ごめん、不安にさせて。会いにいけなくて、中々電話とかできねぇし、あんまり出掛けたりもできなくて」

普段、野球してる俺に気遣って何も言わないナマエが言った我儘。
ずっと我慢してくれてたんだよな。
ずっと何も言わずに俺を支えててくれたんだよな。

「中学の時から、やのが、野球頑張ってるって、知ってたから。だから、いいの。」

俺の腕の中で泣きながら、それでも俺を第一に考えてくれるナマエ。


ナマエが我慢して、相手が良ければそれでいい。
こいつにはそう考える節がある。
それは友達であった時から分かっていた。これがこいつの良い所でもあって最大の短所でもあると思う。

もっと我儘を言ってくれても良い、けどそれは叶えられない事も多いだろう。
そしてナマエもそれをわかってるから、俺に気遣って何も言わない。

野球をしてる身としては、休みはとても少ないから助かる。
しかし彼氏としてはいただけない。


「ナマエ、俺はさあんまり言葉じゃ言わねえけど、お前が大事なんだよ。だから、出来るだけお前を喜ばせたい。俺に気を使って泣いてほしくない。もっとお前は我儘言っていいんだよ」



「お前の我儘叶えたいと思う。けどあと1年は悪いけど我慢させる事も多いと思う。それでも俺といてくれますか、」



「矢野、私ね、矢野が大好きなの。だから我慢はなんてことをない。もう迷惑かけないようにする、だから、」

まだまだこれからも、一緒にいたいよ



お前のことなんて、迷惑に思ったことないのに。
むしろ俺の方が迷惑かけてばっかりなのに、大好きだって、一緒にいたいって言ってもらえる俺はとてつもなく幸せ者なんだろうと柄にもなく考えてしまう。


「ナマエ、」

高校生が愛なんて、って大人は言うかもしれない。
それでもこいつに贈る言葉は好きなんかじゃ足りないと思うんだよ。

「いつもありがとな愛してる」



君に贈る言葉


いつも我慢させてごめん。
俺のことを考えてくれてありがとう。
これからも宜しくな。



矢野さんってこんな人だったっけか。

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