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大好きで大嫌いだった




「話とは何でしょうか。」


緑間とこうやって2人で話すのは一体いつぶりなんだろうか。

高校入ってから?
ううん、きっと中学の最後の全中以来だ。


「緑間、緑間はえっと、その。」

なんて言ったらいいんだろう。

ずっと話さなきゃとは思ってた、だけどいざ話そうと思うと言葉が紡げなくなってしまうのはわたしの昔からの悪い癖だ、とは思う。

「み、緑間は人事を尽くしてない人は嫌だよね」

こんな言い方しかできない。

嫌われてると思う、そう虹村には伝えたけど実際にこの子から、この子達から嫌いだ、と否定されてしまうのがとてもこわい。

一緒にバスケしたきた事も、バスケの話したこととか全部嫌いな思い出にされるのが、こわい。


「?...確かに、人事を尽くさない奴とは馴れ合うつもりはありません。」

「そう、だよね」

緑間の方を向けない。
バスケが怖くて、才能のある彼らが妬ましくて、1度逸らしてしまった目を再び彼らに向けることができない。

「緑間が、嫌だって言うなら...わたし、バスケ部...やめるから」
だから心置き無くバスケしてて。


またバスケから離れるのは辛い。
せっかくまたボールに触れることが出来たのに、先輩たちと...IH優勝も夢みた。

けど、わたしがバスケ部にいることで緑間が不快に思うのなら、少しでもIH優勝の妨げになるのなら、わたしはバスケ部を辞めることだって厭わない。


「どうしてそうなるのだよ」

どうして?そんなの決まってるじゃない。

「じゃあ緑間は嫌じゃないのっ、わたしが全中の決勝でなかったの、 知ってるでしょ!?
バスケから逃げたんだよ!途中で!全て投げ捨てて!!
そんな奴が今!バスケ部のマネージャーやってるんだよっ、
バスケからも、緑間たちからも、逃げた臆病な奴がまた君の先輩面するのなんて嫌でしょう!?」

「俺は、葵さんが逃げたとは思ってないのだよ。葵さんが決勝に出なかった理由は知りません。ですが、先輩がそれまでに人事を尽くしてた事は知っています。」

そして今も、葵さんがマネージャーとして人事を尽くしていることはよく知っているのだよ。



この後輩たちは、どうしてこんなに優しいのだろう。

わたしはあんなに一緒にバスケをして、話して、懐いてくれてた後輩たちが一番に困ってる時に見て見ぬふりしたのに。
先輩として、最低な事をしてしまったのに。

「ごめんっ、ごめんね、みどりま。
皆が困ってる時に、何もしなくて。悩んでたの、知ってた。だけどもう見たくなんてなくて、ずっとずっと知らないふりしてたの」

ごめん、ごめん。
どうしても謝らなくちゃいけないと思ったの。
だって知ってた。
青が自分のありすぎる才能に絶望して
紫が全てどうでも良くなって
黄が目標が腐ってしまって
黒がみんなを見るのが辛くなって
赤が本当の自分ではなくなった。

そして緑が彼らをずっと見てた。
仲間がどんなんになっても練習をたった1人で続けてきた。

「先輩が謝ることなど何もないのだよ。俺たちが”ああなった”のは今となっては仕方が無い事だった、それに今の俺は秀徳バスケ部だから奴らの事などどうでもいいのだよ。
秀徳バスケ部には、葵さんが必要なのだよ。」


真っ直ぐなモスグリーンの目は、嘘は言わない。
昔から知ってる。

だから、だから今はもうごめん以外を伝えよう。


「ーーーーー、」


「...緑間、IH絶対優勝しようね」

「ふん、当たり前なのだよ」



(大好きで大嫌いだった)


ありがとう、


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