「S・O・S?」
今日学校を休んでる(千代情報)野崎からのメール。
SOS?締め切り間に合いそうにないのかな、でもそれだったらわたしにメール送る必要ないよね。
わたし、自分で言うのもアレだけど!細かい作業と出来ないし...。
「...風邪?野崎が...?」
うーん、一応差し入れでゼリーと墨汁買っていこう。
そしたら風邪でも締め切りでも大丈夫!
* * * *
「おじゃましまー...ってアレ?」
墨汁を持って立ち尽くしている千代と堀先輩と...緑色だから、後輩くん。
「伊織ー!の、野崎くんが風邪ひいちゃったの!」
なのに私達、みんな墨汁持ってきちゃって...あぁぁ看病イベントが...
とわたしに訴えかける千代。
看病イベント?
「あ、わたしも墨汁持ってるけど一応ゼリーなら買ってきたよ」
「でかした!伊織!」
同じく墨汁を持ってきた堀先輩が言う。
「取り敢えず、野崎にあげてきますね」
ノックして野崎の部屋に入る。
「のざきー?うわ、本当に風邪なんだ大丈夫?」
「あ、あぁ。咲野、すまん間違えてメール送った。」
「あぁ、あれ間違えだったんだ。はい、これゼリー。食べて大人しく寝ててね」
すまんな、と言って寝ている野崎。
野崎が風邪ひくなんて珍しい。
1年の頃は締め切り間に合わなくて酷い顔してたことは何度もあるけど、風邪は1度もなかったのに。
「あとでまた様子見にくるから、お大事にねー」
「3年背景担当堀政行だ」
「2年ベタ担当佐倉千代です!」
「2年の雑用担当咲野伊織です」
「1年バスケ部若松博隆です!消しゴムかけ、やってます」
締め切りが明日なんだ、と無理に原稿をしようとした野崎に変わってわたしたちで終わらせよう、ということになったのでまず自己紹介。
若松くんバスケ部なんだ、背ぇ高いなーとは思ったけど。
「わたしお手伝いとか出来ないんで雑用担当しますね」
「あ、俺も全然...」
「大丈夫だよ!若松くん!」
「そうだ、初めはみんな初心者なんだぞ!」
けど、そういえば今日残ってるのってトーン...、千代も先輩も担当外じゃないのかしら。
いや、でもアシスタントの担当違っても案外できるものなのかもね。
「あ、飲み物ない...」
取り敢えず、原稿系のことはこの3人に任せることにしましょうか。
「せんぱーい、わたし飲み物買ってきますね」
「お、おう...」
家に帰ってくると、トーンを貼ってるのは若松くんただ1人。
「あれ?なんで若松くんだけトーン貼り?」
「トーン貼りは1年の仕事ですから!」
「...ふーん」
キラキラ輝くように笑ってる若松くんを見てから、先輩と千代に視線をやる。
気まずそうに目を逸らす2人。
...やっぱりトーン貼りは担当外だったんですね。
「若松くんは、細かい作業得意なの?」
「こういうの嫌いじゃないんです!」
「へぇー、いいなぁ。わたし細かい作業苦手なんだぁ」
「え!意外です!咲野先輩ってそういうの得意そうっていうか...」
あ、まだ会ったばかりなのにすみません...!!
そう言う若松くん。
か...可愛い...!!!
「...この愛でたくなるような後輩要素!!!」
「?どうしたんですか、咲野先輩?」
普段あまりこんな風にthe・後輩!っていう子がいなかったからかな!?
若松くん超カワイイ!!
「気にすんな、若松。こいつ普段は最早後輩からも可愛がられる側だから」
「?そうですか」
若松くん超かわいい。まじカワイイ。
後輩って普通こんなんなんだ...!!!
うちはどちらかと言うと上下関係よりも「舞台を作る仲間」って感じだもん。取り敢えずどうしよう!こんな感じ始めて...
「ってやばい!時間だ!」
今日はきちんと早めに家に帰るって伝えちゃってるんだった!
「すみません、今日はこのくらいで帰りますね」
まぁ、わたしに出来ることもありませんし...
「あ、はい!若松くん!アメあげる!トーン頑張ってね!!」
「は、はい!」
「じゃあお先に失礼します、先輩!千代、また明日ね!」
今日は可愛い後輩と会えたし、なんて良い日なんだ!!!
後輩くん(トーン担当)、はじめまして