side...1年演劇部員
部活が始まる30分前のこと。
各自が自分の準備をし始めた頃、
台本を読んでいる咲野先輩と一緒に内容を確認している部長がいた。
2人で同じベンチに座っていて、それはよく見る光景だと新入部員の私にも馴染みのあるものになってた。
そして今、先輩たちが話している内容だが(盗み聞きではない、咲野先輩に話があるんだけど2人の会話に入るタイミングをのがしただけ!)、今日咲野先輩が階段から落ちたらしい。
「お前今日階段から落ちたらしいな」
「けど、ゆづ...友達がちゃんとキャッチしてくれましたよ!」
「もし怪我してたらどーすんだよ、馬鹿!」
「えへへ、」
部長が怒ると、嬉しそうに恥ずかしそうにはにかむ。
「...何笑ってんだよ」
「先輩...心配してくれたんですか?」
「心配するに決まってんだろ」
「...わたしが演劇部の後輩だから?」
そう言って咲野先輩は切なそうに目を伏せる。
「そうだ、だけどな」
部長は一旦言葉をきって、咲野先輩に手を伸ばす。
「...せんぱい」
「お前が俺にとっても大事だから、心配してんだよ」
部長はゆっくりとした動作で咲野先輩の髪をすくい、そっと口付ける。
そんな部長に咲野先輩は避難の言葉を向けるどころか少し嬉しそうに部長の方を見ている。
あれあれあれ?2人ってお付き合いなさってたのかな!?
入部して早数ヶ月、衝撃的な事実!
え、けど咲野先輩は鹿島先輩ともいい感じで(鹿島先輩は女の人だけど...)...もしかして、部長はいつも鹿島先輩嫉妬してあんなバイオレンスなことを...!?
「先輩も伊織もそのくらいにしといたらどうですか?1年生が真っ赤になって固まってるよ」
そんな2人に声をかけ、私の方を指差する2年生の先輩。
「い、いや!その!あああのすみません!ずっと見てたわけじゃないんです!!続けてくださって大丈夫です!」
慌てて弁解する私。
ごめんなさいごめんなさい、カップルの邪魔するつもりはなかったんです...!!!
すると、周りの2年生や3年生の先輩たちが笑だす。
「そっかー、1年はまだこいつらのコント見たことなかったよなー」
...こ、コント?
「ちょっと先輩!コントって言わないでくださいよー」
おこですよー、と可愛らしくコントを否定する咲野先輩。
...え?
「こいつらさ、暇になるとすぐ即興して遊び出すんだよ」
3年生の先輩が笑ながら教えて下さる。
...え、即興?
「やっぱり即興といえど、こんな反応してくれる子がいると嬉しいね!」
笑顔で言い放った咲野先輩とその隣で部活始めるぞー、と言う部長。
部長と先輩の恋人疑惑
...一体いつからが即興ですか先輩方。
*鹿島はおさぼり中