「伊織先輩!こっちの衣装なんてどうでしょう!?」
「先輩はきっとこの髪型が似合います!!」
「伊織、ちょっとお化粧もしちゃおっか!」
「「「か、かわいいぃぃ〜!!!」」」
なぁんて言って次の衣装やら髪型やらを考え出す演劇部の後輩と先輩。
「あ!伊織先輩!!アメありますよ、どうぞ!!」
「伊織ちゃん、そういやこのお菓子新作なんだけどあげるよ!」
「おーい、伊織、」
「納得いかない。」
「...は?」
用があってわたしの名前を呼んだ堀先輩に呆れた目で見られる。
「なにが」
一応聞いてくれる先輩。
...だけどそんな「くだらねぇことを...」的な目では見ないで欲しかったです。
「だ、だって、この間の野崎のところの若松くん、いたじゃないですか!」
「あ?あぁ、若松な」
「若松くんはあんなにっ!!わたしを先輩みたいに扱ってくれたけど、演劇部って先輩どころか後輩までわたしの事を甘やかそうとするじゃないですか!!」
「......」
「いっつも飴くれたり新作のお菓子持ってきてくれたり、衣装選びのときは完璧にお人形状態ですよ...!?」
「まぁな」
「まぁなって先輩...!!」
「お前は演劇部のひ.............、」
言い淀む先輩、なんだって言うんですか!
「なんたって、演劇部のお姫様だからねっ」
「あ、鹿島!」
ひょっこりと現れた鹿島が言う、「演劇部のお姫様」。そりゃあ、舞台上ではいつもヒロイン役をさせていただいてますけど、関係ないじゃない。
「なーんか、伊織って甘やかしたくなる見た目してるんだよねー!」
中身は案外しっかりしてんのにねー!と言って笑う鹿島。
「見た目ぇ?理解できないわ」
「でも、ねぇ?堀ちゃん先輩!」
「そうなんだよな、伊織はなんか1人にしたら危ないかんじするしな」
「...子供っぽいって言いたいんですか?」
「いやぁ、もう伊織って愛でたくなるの!!」
「分かる分かる!!」
と色んな人が話に加わってくる。
「子供っぽいって言いたいんじゃなくて、なんて言うんだろう...!!」
「そうそう、この...さぁ!」
どんどん白熱していく話。
あれ、なにこれ、わたし何が聞きたかったんだろう。
興奮気味に話すメイク担当の先輩や衣装担当の後輩。
ねぇ、なんで鹿島まで面白がってそっち側にいっちゃうのよ。
「...恐ろしい光景だ。」
「まぁ...そう言ってやるな。」
我らが演劇部のお姫様
「あ、でも堀ちゃん先輩の1番の可愛い後輩の座はあげないよ!伊織!!」
「別に鹿島は俺の1番の可愛い後輩じゃねぇけど」
「どうしてですかっ!?先輩っ!?!?」
...演劇部って普段はこんなに騒がしくて変な部活じゃぁ、ないんだよ。