小説 | ナノ
「せ、せんぱい!わたし、先輩のことが大好きですよぉ!」
「なんでなまえ先輩が幸せになっちゃいけないんだよ!!あんたは幸せになるべきだろ!?」
「栄純くん!おちついてっ!...でも名字先輩、僕も先輩には幸せになって欲しいんです。」
「名字先輩、御幸先輩のところ、行きませんか?」
じゃあ私は結城たちと一緒に観客席戻るから、くれぐれも暴れないようにね?、と残して先輩たちは去っていった。
「御幸と結婚、かぁ...」
あの頃のわたしが見たら何て言うかな。
”嘘みたい”?
”うれしい”?
”わたしでいいの”?
わたしは一也が好きだった。
だけど周りがソレを許さなかった。
大好きだったのに、それでも駄目だった。
トントン
「なまえ?準備おわったかー?入るぞー」
「一也!」
「お、随分綺麗にしてもらったな」
「ふふふ、でしょ!貴子先輩すごいよねー」
「そうだな、」
なまえ、と甘ったるい声で一也がわたしの名前を呼んで、頬に手を伸ばす。
「かずや、」
トントントン
「....」
「!!」
急にドアが叩かれたことによる驚きから大きく肩を揺らしてしまったわたし。
そんなわたしを見て、はっはっは、と何時もの笑い方をしてドアの方へ行く一也。
「なんだよ、お前かよ沢村。」
「なんだ、とはなんですか!可愛い後輩がお祝いにきてあげたんですよ!」
「御幸先輩、お久しぶりです。」
「おー」
一気に騒がしくなった控え室。
「先輩っ!えっ、凄い綺麗です!」
「あ!春乃ちゃん」
春乃ちゃんと、沢村くんと春市くんと降谷くん。
彼らにも学生時代は相当お世話になったと思う。
彼らは後輩だけど、たくさん私の背中を押してくれた。
素直な、純粋な、私に足りなかった気持ちをたくさん与えてくれた。
「なまえ先輩!お久しぶりです!この度は、えー誠におめでたいことで!ここはわたくし、沢村栄純が、全力で祝福したいと思います!!」
「え、栄純くん...。...名字先輩、御幸先輩、ご結婚おめでとうございます!」
「おめでとう、ございます。」
「先輩!本当にお綺麗です!!ご結婚おめでとうございます!」
「あはは、ありがとう、みんな」
一也も口ではこの後輩たちのこと”生意気だ”とか”からかいがいがあるぜー”とか言うけど、本当はすっごく感謝してるんだよ?
「沢村なんだよ、その挨拶!」
「は、はぁー!?人がせっかくお祝いしてるのに何スか!その態度は!」
「お前は高校卒業しても変わんねぇなぁ!精神年齢が!」
「む、むきー!!」
「ちょっと栄純くん!やめなって!」
「はっはっは」
空回りばっかりだった私と一也の関係は、確実に君たちの真っ直ぐな気持ちに助けられてきたよ。
ありがとう、かわいい後輩たち。
(The lovely lovely younger generations.)
「すみません!じゃあ僕たち客席に戻りますね!」
「うん、ありがとう!春市くん」
「あいつらは本当、変わんねーな」
「ふふ、そうだね。」