小説 | ナノ
「貴子先輩〜!」
「あら、なまえ!早かったわね」
「だって!今私が言ったらどうなるんですか!?私はこれ以上御幸を困らせたくないのに!」
「だからっていつまでもそのままにしてていいの?それでなまえと御幸くん、2人とも幸せなの!?」
「貴子先輩、」
「なぁに、あ、動かないで、ライナーずれるわよ。」
「...ありがとうございます。」
「いいのよ、可愛い後輩のためだもの。」
今も、これまでも。
貴子先輩も、他の先輩たちも、あまり周りから応援されてなかった私たちの恋をいつだって見守っててくれた。
挫けそうにもなった。
諦めたくもなった。
そんなとき、いつも助言をくれたのは先輩たちだった。
ドンドンドン
「おー名字!元気だったかぁ!?」
「久しぶりだな、名字」
「...名字、お前太った?」
「純先輩、哲先輩、亮介先輩!...亮介先輩、最後に会ったの一昨日じゃないですか!太ってませんから!」
「ちょっとあんた達、まだ準備中なんだけど」
仕方ないわねぇ、と貴子先輩。
どんだけ変身できるのか見ようと思って、と亮介先輩。
おぉ、メイク道具って沢山あんだな、と純先輩。
む...、と哲先輩。
「名字、応援していてくれてありがとう」
「ダァァ!お前は笑ってりゃいーんだよ!」
「なんでお前が泣いてるんだよ、馬鹿。」
「お前は御幸が好きなんだろう?主将だからって遠慮する必要はないんだ、行ってこい。」
「あー、なんつーかよぉ、お前はさ...あー!もう、お前はお前だ!周りなんか関係ねぇ!気にすんな!」
「お前が気にすることなんて無いんだよ。それで御幸にフられたら俺の所においで。慰めてやるからさ。」
「先輩たち、一也に会いに行きました?」
「あぁ、今行ってきたところだ。」
「あいつは...あー!思い出しただけで腹立ってきたぜ!」
「え、何言われたんですか?」
「御幸のやつ、”先輩方、お久しぶりっス。あれ、純さんまだ独身っスよねー?いい加減彼女でも作らないとまずいんじゃないんですか?”って純に言ったんだよ。」
「あ、てめぇ亮介!言うんじゃねぇよ!」
「あはは、一也ったら」
今でもみんなで集まれば昔のように軽口を言い合う。
みんな仕事もあって学生時代変わってしまったけれど、
変わらないこの関係。
楽しくて、安心する。
頼もしくて、楽しくて、あったかい先輩たち。
わたしは先輩方みたいに立派な先輩にはなれてたのかな。
追いかけても追いかけても、先輩たちは凄くて、いつだって私たちの手の届かないところにいたんだ。
綺麗ではっきり物事を言う貴子先輩。
口数は少ないけど、力強い目をした哲先輩。
スピッツ、なんて呼ばれてた五月蝿いけど、実はすごい面倒見がいい純先輩。
意地悪だけど、いつだってわたしを助けてくれた亮介先輩。
みんなみんなかっこよくて、大好きな先輩たち。
「...よし!花嫁さん完成!」
おぉ、と先輩たち。
「綺麗よー、なまえ!御幸くんには勿体無いくらい!」
「えへへ、貴子先輩ありがとうございます!」
そこで哲先輩が最初から持っていた花束を私に渡す。
色んな花があってすごい綺麗。
「わぁ!大きい花束!ありがとうございます!」
「名字、結婚おめでとう。」
「まぁ、アレだ!幸せになれよ!」
「結婚おめでとう、名字みたいな奴でも結婚できて良かったね。」
綺麗だよ、と言ってわたしの頭をセットされた髪を崩さないように丁寧に撫でてくれる亮介先輩。
「なまえ、本当におめでとう!」
「...せ、先輩ぃ」
先輩たちの優しさに涙が出そうになる。
いつだって助けてくれて、見守ってくれて、優しくてかっこいい先輩たち。
「貴子先輩、哲先輩、純先輩、亮介先輩!いままでありがとうございました!これからも宜しくお願いします、大好きです!!」
(Thank you presented to the senior who should respect.)