小説 | ナノ

 春はまだやってこない (高尾)



「もう終わりにしよう」




あいつから別れを告げられた12月。
3年越しの初恋は、終わりを迎えた。

中1の春、君を見つけて、恋に落ちた。
一目惚れってやつだった。
だけど話しかける勇気なんかなくて、
想いを持ち続けたまま中2の冬、
肌寒い屋上で彼女から告白された。

俺はもう嬉しくて嬉しくて、その時なんて答えたかなんて覚えてないくらい喜びつつyesの意を示した。

俺からはこの気持ちを伝える気はなかった。
だって俺、バスケやってるじゃん?
万が一俺が告白して付き合うことになっても絶対に彼女優先になんて俺にはできねーし、それだったらこの初恋は心の奥にしまいこんだ方がいいと思ってた。

だから告白された時もその後も「本当に俺でいいの!?」なんて何回も聞いちまった。

そして中3の夏、緑間たち帝光中に惨敗した。
悔しくて、圧倒的な実力差を見せつけられて部活を引退した後もひたすらバスケに打ち込んだ。

夏の試合で落ち込んだ俺を慰めてくれたのもあいつだったし、いつも1番に応援してくれたのもあいつだった。

なのに俺はいつだってバスケばっかりで。
それでもあいつは俺の側にいてくれるって心の何処かで安心してたんだ。

「和くん、もうわたしたち終わりにしよう」

「...っなんでだよ、俺がバスケばっかりだからか?名前に寂しい思いばっかりさせてるから...!」

「ううん、違うよちがう。バスケばっかりなのは仕方がないよ。和くん努力してそんなに上手くなったんだもん」

「じゃあ嫌いになった?」

「それも違う。和くん以上に素敵な人はこの先見つけられないかもしれないって思うよ」

「なん...っだよ」

「これはわたしの我儘だよ。だからね、ごめんね」


最後に彼女は「 ありがとう 」と笑って言った。

俺は泣きながら「 ごめん 」と呟いた。


春はまだやってこない


「あ!雪だぜ、真ちゃん!」

「雪ぐらいで騒ぐな、馬鹿め。」

「さみーと思ってたけど、もう雪の季節かぁ...」

寒空の下の、彼女の作り笑いを思い出した。
あの時彼女があんな顔をしてまで、どうして俺に別れを切り出したのかは彼女にしかわからない。
本当は、あの時泣きたかったのは俺じゃなくてあいつの方だったんじゃないか。
1年たった今でもあいつの事が俺の思考を占領する。
あぁ、俺ってこんなにも、

「大好き、だったんだ...」

高1の冬、俺は小さく恋を呟いた。

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