▼ 「わたしに気づいて」(高尾)
「どーしよ!名前!高尾がイケメンだった!!」
「はいはい、成功したみたいで良かったね」
わたしの親友の想い人は、高尾和成。
「名前ちゃーん!」
「...和成。」
わたしの幼馴染も高尾和成。
わたしはさしずめ恋のキューピット(になる予定)である。
「高尾くんはどっちの方が好きかなー」
「和成はね、こっちの色のほうが好きだよ」
「おっけーじゃあこっちにする!」
そう言って、いつもありがとね!って笑う親友にこちらまで嬉しい気持ちになる。
だけどおかしいの。
嬉しいのに、この子と和成が一緒にいるところを見ると酷く嫌な気分になる。
きっとこれは幼馴染が、親友が、わたしから離れていってしまうのが寂しいだけ、だからだ。
「名前ー!」
き、今日ね高尾くんに告白しようと思うの!
「そっか、頑張ってね」
「うん!行ってくる!」
親友の恋を応援し始めて3年半、中学からの付き合いのこの子が片想いに終止符をうつようで。
いつもよりも可愛くして、告白をしにいったあの子の背中を見て、胸がチクリとする。
なんでだろう、あの子のことも、和成のことも大切に思ってるのに。
...あの子と和成が付き合うのが嫌だって思うなんて。
「...気持ち悪い、」
あの子も先に帰ってて!って言ってたし、わたしは帰ることにしよう。
きっとこの気持ち悪いだって寝てしまえば治るんだから。
校門に向かうとき、目の前に和成が見える。
きっと今から告白されるんだ。
和成はわたしに気づかない。
...嫌だよ、遠くにいっちゃわないで
「...和成っ!」
「わたしに気づいて」
久しぶりに彼の顔をしっかりみた気がした。
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