小説 | ナノ

 「わたしに気づいて」(高尾)



「どーしよ!名前!高尾がイケメンだった!!」

「はいはい、成功したみたいで良かったね」

わたしの親友の想い人は、高尾和成。


「名前ちゃーん!」

「...和成。」

わたしの幼馴染も高尾和成。


わたしはさしずめ恋のキューピット(になる予定)である。





「高尾くんはどっちの方が好きかなー」

「和成はね、こっちの色のほうが好きだよ」

「おっけーじゃあこっちにする!」

そう言って、いつもありがとね!って笑う親友にこちらまで嬉しい気持ちになる。

だけどおかしいの。

嬉しいのに、この子と和成が一緒にいるところを見ると酷く嫌な気分になる。

きっとこれは幼馴染が、親友が、わたしから離れていってしまうのが寂しいだけ、だからだ。






「名前ー!」

き、今日ね高尾くんに告白しようと思うの!

「そっか、頑張ってね」

「うん!行ってくる!」


親友の恋を応援し始めて3年半、中学からの付き合いのこの子が片想いに終止符をうつようで。

いつもよりも可愛くして、告白をしにいったあの子の背中を見て、胸がチクリとする。


なんでだろう、あの子のことも、和成のことも大切に思ってるのに。


...あの子と和成が付き合うのが嫌だって思うなんて。


「...気持ち悪い、」


あの子も先に帰ってて!って言ってたし、わたしは帰ることにしよう。

きっとこの気持ち悪いだって寝てしまえば治るんだから。






校門に向かうとき、目の前に和成が見える。
きっと今から告白されるんだ。

和成はわたしに気づかない。


...嫌だよ、遠くにいっちゃわないで


「...和成っ!」



「わたしに気づいて」


久しぶりに彼の顔をしっかりみた気がした。

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