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 深呼吸して君に好きって伝えよう(黄瀬)




「先輩、名前先輩!大好きっス!」

「あはは、黄瀬くんったら冗談が好きねー...」

「冗談じゃないっスよ!俺は本気!」

「ほら、キャプテンに怒られちゃうよっ」

笠松先輩が睨んでる!と言えば、そそくさと練習に戻っていく後輩くん。

ワンコみたいで、いつもキラキラしてて、

「名前ちゃーん、顔引きつってるよ?」

「...分かってて言うのやめていただけませんか、森山先輩。」


わたしは少し、苦手だ。
















黄瀬くんとは中学の頃からの知り合いだった。

当時のわたしは男バスのマネージャーじゃなくて、女バスのレギュラーだった。
これは余談だが、男バスの主将だった虹村とか同じPGの赤司くんとは結構仲良くしてもらってた。


わたしは最後の全中で、故障した。

靭帯の断裂、
今となっては手術して日常生活には支障ない。

だけどバスケは無理だった。

そんな時見たのが黄瀬くんたちの、キセキの世代と呼ばれる後輩たちのバスケだった。

バスケを楽しいと思うでもなく、ただ淡々と勝ちだけを目指してるバスケ。

当時のわたしにはどうしても許せないものだった。


足を怪我したからもうバスケは出来ない。

そんな事、分かってる。
認められなくて、認めたくなくて、無理やりバスケをしようともした。

けどもう、動かない。

わたしはバスケが大好きだったのに、
なんであんな楽しくなさそうにバスケをする奴らが平気でわたしは無理なの。

彼等も彼等なりに思うことはあっただろうけど、故障したばかりのわたしが見るには酷すぎた。


だから、突き放した。

あの笑顔が嫌いになった。






「入学当時のあいつならまだしも、もうそろそろ認めてやっても良いんじゃないか?」

「それはそうなんですけど...何となく自分の中で割り切れないというか...きっかけが無いというか...」

「お前が嫌いなのは、黄瀬自身じゃないだろ。」

「...ぁ」


わたしが嫌いだと、苦手だと思ってた黄瀬くん。

けど、わたしが嫌いなのは彼のバスケで、しかも黒子くんたちに負けてからは真面目に取り組んでて。

「もう少し黄瀬に素直になってやれって、な?」

「....」


「名前先輩ーってああぁぁ!なんで森山先輩といるんスか!?」

わたしが苦手なのは...?

「名前!」

この笑顔は...?

「大好きっスよ」

彼の声、性格。

「わたしも、好きかも...」

「え!?」

「...〜ほらっ!休憩終了!黄瀬くん戻って!」

「えっ、ちょっ!?名前先輩!?」


まだ自分の気持ちがよく分からない。

だけど分かったらまた改めてこの可愛くてカッコイイ後輩くんに言ってあげてもいいかもね。


深呼吸して君に好きって伝えよう


ずっと苦手だからって避けてきた。

今から近づいてみるから、たまにでいいから私のこと振り返って見てて欲しいな、なんて。

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