小説 | ナノ

 主に顔が好きです (黄瀬)



「名字は黄瀬の何処がいいんだ?」


場所は海常高校体育館、今の時刻は17時10分。ようやく訪れた15分休憩です。


海常高校バスケ部の休憩時間は大抵騒がしい。
黄瀬がキャンキャン喚いてたり早川先輩がラ行言えてなかったり森山先輩が口説いていたり、それらを笠松先輩がしばいていたり。
ちなみに小堀先輩と中村先輩は傍観を決め込んでるため休憩時間が終わるまで大変煩いのだ。


そして今日も部員達にタオルやドリンクを渡して、次のメニューの準備のために笠松先輩の元に向かったところ森山さんの冒頭の台詞を投げかけられた、ということだ。


「黄瀬の良いところ、ですか?」

「そうだ、俺はどうして名字が黄瀬なんかと付き合ってるかが理解できない!」

「森山先輩!!それ俺に失礼じゃないっスか!?」

...私、笠松先輩に用があるのだけれどなぁ。
そう思って笠松先輩の方を見ると呆れた様子で首を左右に振った。
あぁ、そうですよね。もう無駄ですね。

「黄瀬の長所って言ったらバスケですよね」

「それは長所であって彼氏にした決定打ではないだろう?」
「まぁキセキの世代と一緒にいたら決定打にはならねぇだろ」
「俺が聞きたいのは好きなところだよ!好きなところ!」

うーん、好きなところ、ねぇ...。

「名前、そんなに悩まなくても...俺の好きな所なんて沢山ありすぎるっスよね!?」

黄瀬はそう言ってちょっと泣きそう。

「あ、ありました。黄瀬を好きな理由。」

「名前!先輩達に言っちゃって下さいっス!」

私の両肩を持って反撃してくれ!とばかりに私の後ろにまわる。

「主に顔が好きですかね」

え、と黄瀬。
やっぱり女の子はイケメンか...、と森山先輩。
はぁー、と溜息をついたのが笠松先輩。

え、私なんか悪いこと言った?

「か、顔だけじゃ、ないっスよね!?」

「え、顔って大きな理由じゃない」

えっ、いや、でも...と黄瀬。
私の後ろでしばらく唸ってから一言。

「そ、それでも俺は名前が大好きっスからね!」

「え、うん、ありがとう」


...ここまでいくと黄瀬が不憫だ。
お(れ)もそう思うっス!
笠松...
笠松先輩...!
あぁーもうあいつらは...!

コソコソと話し出す先輩方。
あ、笠松先輩がこっちに向かってきた。

「名字、お前は言葉が足りねーんだよ。」

「え?」

言葉が足りない?うん?
...あ。

「黄瀬、」

「はいっス...」

「私、黄瀬の顔、好きだよ。表情がくるくる変わって、もっと一緒にいたいって思うし、えーと、それで、黄瀬の笑った顔とか、大好きだよ」

最後の方は聞こえてるか聞こえてないかも分からない程小さな声になってしまった。


「〜っ!俺も名前とずっと一緒にいたいって思うっすよ!大好き!」


主に顔が好きです


「おら!そこのバカップルいい加減しばくぞ!!」
「えぇ...笠松先輩...」
「名前!バカップルだって!」
「はいはい」

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