▼ さしずめ私は村人B (高尾)
物語には主人公がいます。
主人公は物語に絶対に必要であって、主人公がいないと物語は進みません。
そんな物語の中で私は言うなれば村人Bでしょう。
主人公と直接は関わらない、
主人公が話し掛けてくれない限り自分からは物語に参加していけない何処にでもいる村人Bです。
けど関われなくたっていいんです。
話せなくても気づかれなくても、
主人公がいれば物語はすすむのですから。
私の席は廊下側の1番後ろ。
冬は少し寒いけど、夏場は風も入るし結構快適。
それに、毎日高尾くんが見れるんだから幸せ。
高尾くんの席は私の斜め前。
自分から話し掛けることなんかできない私にとって、斜め後ろというのは好きな人をずっと見ていられるベストポジション!
隣の席じゃなくていいのって?
分かってないなぁ、隣の席なんて座ったら緊張して高尾くんの事なんか見れないじゃない!
話すなんて滅相も無いです、はい。
見てるだけで私は幸せ、だから私にとって斜め後ろは最高なの!!
「名前は本当、健気というか、ただのチキンというか...」
「いいんですー、私はこれで幸せなんですぅー!」
「ふぅーん、でも今日が席替えって知っての言い分?」
「...な、斜め後ろじゃなくたって、高尾くんより後ろならいいの!それならいくら遠くたって私、頑張れる!」
「もう、あんたは本当...」
そう、今日は席替え。
うちのクラスでは1ヶ月に1度という高頻度で席替えを行う。
担任曰く「色んな席のほうが楽しくない?」だそうだ。
ちっくしょう、今の私にとっては悪魔の囁きとしか思えない。
せっかく2学期の始めの席替えで高尾くんの斜め後ろをゲットしたのにもう1ヶ月もたってしまった。
...こんなに1ヶ月が早く感じたの生まれて初めてかも。
友達の「じゃあ精々お祈りでもしときなー」という、大層適当な励ましを受け、クジが私の番になった。
ちなみにクジは男女別れてひくため、
今高尾くんは窓側の男子の集団の方にいる。
集団の中にいても高尾くんだけが目に入るのは、恋は盲目ってやつだろうか。
「うっわー、俺16番じゃん、ど真ん中ー!」
「おー、どんまい!」
「俺28番ー!」
「高尾はー?」
「えー?俺は....お!ラッキー、1番後ろー」
「えー!ずっりぃ!」
「高尾交換しろよー!」
なんて声が聞こえる。
え!?高尾くん1番後ろ?
「ほら名前ー、そんな落ち込むなー!ほら!席移動するよ!」
「いやぁ!ここから動きたくないぃ!」
...最悪だ、これじゃあもう高尾くんを眺めることなんて出来なくなるのか...。
そんな事考えて落ち込んでいると、隣から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お、隣名字ちゃん?」
高尾くん!?
「た、高尾くん、ここの席なの?」
「そう!1ヶ月間よろしく!」
ちょ、ちょ、これどうすればいいの!
私、1ヶ月まともに授業受けらんないじゃん!
「なあ、俺が隣だと名字ちゃん、俺の方見てくれないの?」
俺の後ろだった時は俺の方ばっか見てたのに〜。
「は!?」
バッと高尾くんの方を見ると、
高尾くんは楽しそうにこっちを見てる。
「名字ちゃん、ずっと俺の事見てただろ?」
「な、なんで知ってるの」
「うーん、俺もそれだけ名字ちゃんの事見てたっていうこと!」
さしずめ私は村人B 村人Bをみつけてくれたのは、
笑顔が似合う主人公でした。
途中までは宮地さんで書き進めていました(笑)
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