ある秋の日の夕方の男子部屋で事件は起こった。
ヒロが隣のユウヤのベッドに遊びにやってきた。二人で腹ばいになって足を投げ出し、ストローを挿したジュースを飲みながらセンシマンについて熱く語り合うことにした。日本から持ってきたらしいガイドブックを大きく開き、足をぶらぶらと揺らしながら隅々まで読んだ。

そこにバン、カズ、ジンの三人が通りかかった。会話に夢中で笑いながらすぐ二人の近くまでやってくる。話をして高まる気分を抑えきれないヒロは激しく全身を動かし始め、すぐそばにいたジンに足が当たってしまった。
二人が謝るのと同時にコップが宙を舞っているのが目に入った。そこで、ユウヤが本を汚さないように慌ててどけた。ヒロの宝物の危機を救ったのはいいが、コップは真下に落ち、オレンジ色の染みがじわじわと白いシーツに広がっていった。

「うわあ! ご、ごめんなさい!!」

さらにヒロが謝りだすと、ユウヤは怒った様子は見せずに本が無事でよかった、とだけ言った。それが不幸中の幸いだった。だが、こんなシーツの上では寝られないだろう。
楽だからという理由でいつこぼれてもおかしくないような体勢でジュースを飲んでいたヒロと、話に夢中で前を見ずに歩いていたジン。ジュースがこぼれてシーツが汚れてしまったのは仕方ないとして、数日間誰かのところに避難しなければならない。

「僕のベッドを使ってくれ。あれは僕の不注意さが原因だった」
「いえ、僕のベッドをどうぞ! 僕があんな姿勢でさえいなければ……」

ジンは隅に置かれたベッドの方に手を向け、ヒロは三つ並んだ中央のベッドを指差す。前者は綺麗にたたまれたかけ布団と、後者はいくらたたんでもひどい寝相のせいでしわしわになったかけ布団が乗せられている。

「二人とも悪くないよ。だからみんなで一緒に寝たらいいよ! 腕まくらしてあげるから!」


――その夜、無事だった枕とヒロの枕を持ってユウヤはジンのベッドに飛び込んだ。羽毛の布団をめくり、その下に沈みながらゆっくりと壁に向かって転がってみる。ぴったりと壁にくっついてから中央で仰向けになって両腕を真横に伸ばした。

「三人だとあったかいね」
「ああ」
「そうですね」

真ん中に寄せられて布団を肩までかけた。夏も終わり、夜の気温もだんだん下がって寒くなってきた。暖房はまだ早いけれども、これなら温かいだろう。

両端の二人が何か言おうと口を開いたらすぐ隣からユウヤの寝息が聞こえてきた。それに混じって体を小刻みに動かしたり、くすぐったいなどと寝言まで言っている。

「寝ちゃいましたね……」
「そうだな……」


……そんな風に夜が更けていった。両腕での腕枕が続いたのも電気を消してからほんの三十分ぐらいの短かさで、いつのまにか壁と反対側のヒロがベッドから落ちて眠っていた。
2012/10/14

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