※微妙に猥談注意

日本から参戦したアミ、スレイブ・プレイヤーから解放されたカズとアスカを新たに加え、仲間が九人になった日の夕方のことだ。夕食作りに励む女子達の邪魔にならないよう、男子五人は部屋で大人しく今年のアルテミスのDVDを見ていた。
三人が加わる前も全員で見たのだが、やはり何度見ても飽きることはない。アミは日本で友人達をテレビ越しに応援していた。アスカは参加者であり、優勝者だ。この中で今年のアルテミスの様子を知らない者はカズだけだった。

今日はそんな彼のリクエストに応えるためにDVDを上映しているのだ。

まずは予選の各試合がダイジェストで流れている。
すり減るのではないかというほどに何度も巻き戻して個々の動きを隅々まで観賞したり、当時の心境を語ったりと部屋の中は明るい声があふれていた。横からも後ろからも熱い語りが聞こえてくる。出られなかったどころか開催日や場所すら知らなかったので、口々に思いを伝えられても笑顔を保つのが精一杯だった。

次々と決勝戦へのコマを進めていく各ブロックの優勝者を数人見た。見知った顔に安心もした。ここにいる者達は全員が選手として出場していた。この四人の中に優勝を勝ち取ったチームのメンバーはいるのか、それとも――
アルテミスの熱は冷めず世界中がその話題で持ちきりなのだろう。去年の栄光も今や過去のもの、自分の話題は時の流れとともに消え去ったのだとカズはしぼんでしまったように肩を落とした。

「次は俺たちだよ」

その声にゆっくりとカズは顔を上げた。Eブロック決勝戦、まさかの同ブロックで当たってしまった山野バンチームと大空ヒロチームが戦うというシーンだ。
開始早々エルシオンに向かって突っ走るミネルバ、ランの戦術を読んだジェシカの作戦がうまくいったと思われた。しかし、ユウヤの相手の裏をかいた戦法が見事に成功し、目が離せなかった。相打ちで次々と倒れていく四体のLBXと、最後に残ったエルシオンとペルセウスが相手の武器で相打ちとなった。
そのために大会規定では両者敗退となるはずだった。ところが大会本部が特別に許可を出したために両者共に決勝戦に進出した。観客に、そして世界中の人々に元気を与えたように二人のバトルは項垂れるカズにも元気を与えた。

「そうだ、アミたちも誘ってここのみんなだけで小さい大会でも開いたらどうかな?」

ここにいる九人全員がアルテミス経験者だ。周りの者達はバンの名案に賛同の声を上げた途端、部屋のドアが勢いよく開いた。

「それいいな!」

そう言って部屋に入ってきたのはアスカだった。女子三人が集まって料理をしていたのでなんとなく手伝ってみようと思ったが、材料を落としたり皿を割ったりという理由で追い出されたらしい。エプロン姿のままなのはそのためだ。
決勝戦もいよいよ終盤、絶好のタイミングで現れたアスカは画面の外でも中でも人々を驚かせた。

エンドロールが流れている間、今年の優勝者であるアスカは誇らしげに胸をそらし、他の者達はリベンジまたは挑戦の闘志を燃やしていた。
そんな中、

「この大画面でゲームしてさ、AVでも見れたら最こ……もごっ!」
「ななな何言ってるんだカズ! アスカは女の子なんだぞ!!」

この部屋には男子しかいない、そう思い気が抜けたのかカズのうっかりした発言にバンが飛びかかる。AVとは一体何なのかとヒロとユウヤは顔を見合わせる。すると、何事もなかったかのようにジンはユウヤを連れて部屋から去っていった。
ぽかんと口を開けたままのカズを後目にアスカはリモコンでDVDを巻き戻した。
テレビからは「姉ちゃん」と、アスカが男ではないと証明する一言が聞こえてきた。

「別に俺はいいぞ? 男だけで集まっていつもエロい話ばっかりしてるんだろ?」
「してないよ!!」

真っ赤になって言い返すバンを見て、アスカは無邪気に笑いながら一番近くの枕を取った。そこはヒロのベッドだ。数枚の写真が舞い上がり、悲鳴の後にそれらを隠すように覆いかぶさった。
大量に置いていたので体で隠し切れない分の、センシマンの生写真に紛れてバンの写真が出てきた。しかも以前の掃除中にめくられたときよりも数が増えていた。ギークストリートで買ったアルテミスのブロマイド、特訓時のジャージ姿に海水浴に行ったときの水着姿と、バリエーションも増えていた。

カズが再び仲間になる前までは男子で集まって性的な話をしたことがなかった。去年は付き合いで巻き込まれたりと、色々あったのだが。人一倍興味はあっても話を切り出せない初心に、二次元と二・五次元を行き来する特撮オタク、俗世にもだいぶ慣れたが真面目な知識しかない温室育ち、外の世界を知らない純真無垢……これでは十年たっても二十年たっても話せやしない。

「ちょっと大人っぽくなったと思ってたのに、こういうところはぜんぜん変わってないよな」
「……カズこそどうなんだよ」
「さあ? バンが教えてくれたら答えてやってもいいぜ」

一皮も二皮も剥けて帰ってきたから何かいいことがあったのかと聞いたが、肝心なところだけはぼかされて返ってきた。二人が探り合っている裏で、ヒロはこの迫力の大画面でセンシマンを……などとのんきに呟いていた。

「決めた、俺今日ここで寝る! なんかおもしろそうだから」

アスカはヒロのかけ布団を叩いている。四人用の男子部屋だったが、二人、四人、五人と増えたためにベッドが一つ足りない。ジンとユウヤはどこかに行ってしまった。カズもこの後用事があるからと、結局真実を明かさないまま部屋を出ていった。

部屋に残ったのはバン、ヒロ、アスカの三人だ。アスカは本気でここで寝ると言い張ったので夕食時に女子達に聞いてみた。何かあったら逃げてくるのよ、とだけ言われ、入浴後にアスカは女子部屋から枕を持ってきて何故かヒロのベッドに飛び込んだ。

「襲われたらどうしよっかなー……」
「大丈夫ですアスカさん、どんな悪が襲ってこようとも僕が絶対に守り抜いてみせますから!」

全く意味のわかっていないヒロと、からかっているつもりのアスカ、この二人では同じベッドで寝ても何もないだろうとバンは布団にもぐり込んだ。
その夜、二人の寝相の悪さと二倍になった寝言にあまり眠れなかったのは言うまでもない。
2012/08/26

prev | next

TOP

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -