七月七日、七夕の日。ジェシカが朝食を作っている間、仲間の五人は廊下を何度も行き来していたので、何やら騒がしかった。あれがいいだのこれがいいだのと立ち止まっては言い合い、そしてまたどこかに行ってしまう。不思議に思ったジェシカはその中の一人、バンを捕まえて何をしているのか尋ねた。

「今日は七夕なんだ。七夕は日本の行事で、短冊って紙に願い事を書くんだ」
「ふーん、日本の行事って色々あるのね」

すぐ傍をジンが通りかかり、バンを呼んだ。
どうやら五人は短冊を飾る笹の変わりに使えそうな植物を探しているという。ジンが丁度いい植物を見付けたので、他の三人は周りに集まっているそうだ。
朝食を作り終えたのでジェシカも二人に同行することにした。

バン達がそこに着いたときには三人は短冊に願い事を書いていた。ヒロとランは誇らしげに短冊をその植物に結んだが、ユウヤはまだ何か考えているようだった。短冊が人数分置いてあったので、三人はそれぞれ好きな色を選んだ。
ジェシカはヒロとランの短冊に書かれた文字を見た。ヒロの短冊には「センシマンのように強くかっこよくなりたい」、ランの短冊には「LBXも空手も誰にも負けないくらい強くなりたい」と書かれていた。

「願い事なら何でもいいのね?」
「昔は裁縫や書道の上達を祈ったらしいが、今は好きなことを書けばいい」

気合いを入れようとジェシカは袖をまくった。一体、何を書くつもりなのだろうか。

「よし、できた」
「僕もだ」

バンとジンも書き終えて短冊を植物に吊るした。バンは「ジンたちとこれからもバトルをしてみんなで強くなりたい」、ジンは「バン君たちとバトルを続けて高みを目指したい」と書いていた。お互いの書いているところを見なかったのに、二人とも考えていたことは同じだったので笑い合った。
続いてジェシカも短冊を飾った。書かれていたのは「イケメンでバトルが同じくらい強い彼氏がほしい」、だった。アングラテキサス以来ずっと願っていたことだ。

笹代わりの植物には五枚の短冊がぶら下がっている。残りは一枚、ユウヤの分だ。あれから何を書くかずっと迷っていたようだが、ようやく手を動かし始めた。

「みんなの願いが叶いますように……」
「さすがユウヤさんです! センシマンのように強く、それでいて優しい……」
「ヒロ君、僕はセンシマンみたいにすごくないよ」

願いを口にした後ユウヤは、ひもを通した短冊を空いている場所にくくりつけた。今願いたいことはこれくらいしか思い浮かばなかった。幽閉されている間に願った、普通の人間としての生活や、幼なじみとの再会は叶えられた。そして今は、かけがいのない仲間に囲まれているのだから。
2012/07/07

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