▼多分スガ→タク→ヘド

タクトが綺羅星十字団に拉致されて、スガタが救出にきた、とかそんな設定です。
書かなきゃ解らないネタで済みません。










「ストックホルム症候群って知ってる?」

突然そんな問いを投げ掛けられれば、誰だって混乱するだろう。それが捕らわれのお姫様的なポジションに居る彼から発されたなら尚更混乱してしまうのは仕方無い事だと思う。スガタが頭上に疑問符を浮かべながら首を傾げ、眉間に皺を寄せる。それに上乗せする形で、《ストックホルム症候群》などという単語がタクトの口から出て来たという事実にも驚きを隠せず、スガタは双眸を幾度か瞬かせ、そして小さく頷いた。

「…――ああ」
「良かった。なら話は早いけど」

大して驚いた様子は無く、予想通りといったふうな表情でタクトが感嘆の息を吐く。




「もしかしたら僕は、その病気にかかってしまったのかも、知れない」

続けて呟かれた言葉は、裏切って欲しかった予想の通りで、唇を噛み握り締めた拳に更に力を込める。



「此処に閉じ込められて随分経つけど…さ。最初はスガタやワコの居るとこに帰りたかったし、この鳥籠を壊して逃げようともした。けど、」

膝を抱え、其処に顔を埋めながら己の心情を淡々と語るタクトの表情こそ見えやしないが、何となく、直感に近いもので彼が微笑んでいるだろう事を察する。


「…けどね。何時の間にか僕は彼に恋愛感情での《好き》って気持ちを持ち始めてるみたい。造られた感情かもしれない。それこそさっき上げた病気みたいに、この鳥籠の中の生活が終わったら憎悪に変わるかもしれない。でも、今、僕はあの人を――」
「もう、いい。」

それ以上の台詞を聞きたくなくて、僕はタクトの言葉を遮るように声を上げる。


「もう、いいから」


――きっと、何もかも遅かったのだ。

僕達が出会うのも、僕が君に心を開くのも、君を助けに来るのも。
全てが遅かったんだろう。



タクトがゆるゆると顔を上げるのに気付き、視線から逃れたくてさっと身を翻す。
彼の顔を見ると、きっと、無理矢理にでも連れ戻したくなるから。



「さよなら、スガタ」

小さく呟かれた離別の言葉には聞こえない振りをして、出口へと向け歩き出す。






最期に一瞬だけ見えた最初で最後の、彼の泣き顔は幻だと、自分の心に蓋をした。









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久々の更新は何これ状態


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