▼怪盗パラレル
むしろコナンパロ
何でも許せる方はどうぞ!













「成程、貴方は矢張りあの刑事さん達とは違って少し頭が廻るみたいですね」
警備が手薄に成り勝ちな場所をかいくぐって侵入し、美術品を颯爽と盗んで行く鮮やかな手口。長年の研究に研究を重ねた結果、努力が実を結び、スガタは怪盗タウバーンを追い詰めるという前人未踏の快挙を成し遂げた。細い路地の行き止まり、彼は袋の鼠だと言う危機的状況だと言うのに普段同様落ち着き払っていて、其の表情は今も純白のシルクハットによって隠蔽されている。
「観念したらどうだ、タウバーン。もう直ぐ僕が手配した警察がやってくるはずだ、逃げ場は無い」
携帯電話を閉じる音が細い路地裏に響いて消える。
「貴方とお逢いするのは此れで何度目でしょう?」
スガタの話等どうでも良いかの様にスルーした後、怪盗はハットの鍔を指先で弄りながら世間話を持ち掛けてきた。余裕綽々な態度と話を無視された事両方に苛々とした感情が湧き出し、眉間に皺を寄せた侭相手を睨み付ければ、「怖い怖い」と肩を竦めて冗談混じりに呟く。
…――全然怖がって居ない癖に良く言う。
会話が成り立たない事は此の数分間の遣り取りで十分理解した。警察が来る前に逃げられては不味いとポケットから手錠を取り出すと、かちゃりと言う金属音に反応した彼が顔を上げた。ハットの影に隠れていた緋色の双眸が自分の其れとかち合い、不謹慎ながらも綺麗な色だと、スガタは思って仕舞った。
「拘束するつもり、ですか。残念です、貴方に触れてみたかったのに。」
手枷を掛けようと至近距離迄近寄った瞬間の発言に、一瞬思考が停止する。何が何だか解らず相手を見詰めれば、口角を緩ませて星空を眺める怪盗タウバーンの姿。流星の奇術師とは良く言った物で、夜空が良く似合う彼に目を惹かれた。
惑わされてはいけない、彼は怪盗…泥棒なのだ。
冷静に、思考を落ち着かせる。ゆっくりと両手共に手錠を嵌め、鍵を掛けた。動き難そうに身を捩っている怪盗は見たところ自分とそう変わらない年頃の青年に見える。緋色の瞳と髪に、純白の衣装が良く映えていて、何とも神秘的な雰囲気に"怪盗タウバーンファンクラブ"成る物まで出来ているらしいが、其れも頷ける容姿だ。
「何を見詰めて居るんですか、探偵さん。私の顔に何かついてますか?…――否、もしかして」
惚れちゃいました?と、首を傾げながらころころと笑う。
「ちが、います。誰が泥棒なんか、」
「怪盗、ですよ。泥棒と一緒にしないで頂けますか?」
「僕にとってはどっちも同じ犯罪者だ」
「心外ですねぇ…」
溜息を吐きながら彼がくるりと身体を翻し、反転する。唯一、段々と大きく成るサイレンの音が時間の経過を知らせてくれている様な気がした。

「…――        。」

何かが聞こえた。刹那、彼が目の前の壁を蹴って飛び上がった。突然の出来事に反応出来ず、茫然と目を見開く。
「次は貴方のハートを盗みに参ります。待っていて下さいね、シンドウ・スガタさん?」
胸ポケットに入れていた筈の名刺を口にくわえた怪盗が、何処からともなく出現した風船を両手一杯に持って宙に浮いた侭微笑んでいた。手品師のように危機的状況からするりと脱出した彼が凄く格好良く見えて仕舞った事と、自分をフルネームで呼んだ事が何故か心臓を跳ね上がらせた事は内緒にしておこう。

其の侭風に乗って遠く夜空へと消えていく怪盗をじっと見詰め、パトカーが到着しタウバーンの姿が見えなくなってもスガタは茫然と立ち尽くし、怪盗が消えた星がきらきらと輝く空を見上げていた。



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