▼ヘドタク
16話で揺らめいた、感覚的作品の為色々曖昧。
















「あなたは何がしたいんですか」

夕陽に向かい絵を描く青年に問い掛ける。
元から返事など、求めて居ない。ただ質問してみたかっただけだ。


「――何、と聞かれても此れと言った目的は無いんだ」

だが僕の予想に反し、質問に対する反応は(何の解決にもならない回答だったが)返ってきた。


驚きに目を見開く僕を青年の双眸が捉える。


「敢えて此の行為に意味を見出すとするならば俺は、俺だけの夕焼けが欲しいんだろうね」

――夕焼けの様に煌めく、君が。


そう言いながら近付いてきた彼の顔が、迫ってくる。
不思議と厭と言う感情は産まれて来ず呆っと相手を見詰めていれば、耳許でくすりと笑う気配がした。


「……熱烈な告白ですね」
「普段鈍感な君が俺の気持ちに気付いてくれて嬉しいよ」
「鈍感じゃないです」


「あなた以外必要無くて、わざとスルーしているだけで…――気付いて無い訳じゃない」


そう言って彼の唇を奪った。



さらりとやってのけたように見えても、実際は僕にとってキスは凄く勇気の要るもので。
熱を持ち、真っ赤に熟れてしまった頬を隠してくれる夕陽に心の中で感謝した。




――そんな殺し文句、何処で覚えて来たんだか。






嬉しそうに少年の身体を掻き抱き、青年が睦言を囁く頃、空は淡紅紫色に染まり始めていた。





あなたの抱きしめてくれる腕は、
こんなにも暖かい
(こぼれた涙は見ない振り)



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