テスト期間中、放課後の校舎は殆ど無人状態だ。
何時もなら運動部の掛け声で賑やかなグラウンドも部活が無ければ静かな物で、矢っ張り部活で汗を流すって言うのは青春だよなぁ、としみじみ思う。

だが静かな学校は、前々から頼んでいた数学のテスト範囲内で、解らない箇所を教わる――所謂勉強会成るモノを開くのにこれ程便利な場所は無かった。
有効利用しなくてどうする。







「――って思って始めたけど、何だか落ち着かないや」

伸びをした後、欠伸を噛み殺そうとする僕を見てスガタが苦笑を浮かべた。

「こら。教えてくれって頼んで来たのはお前だろう」
「でもでも、何か二人きりって落ち着かなくてさ」
「……タクト、赤点」
「いやいやいや、スガタさん御免なさい!」

スガタの方から物騒な呟きが耳に入り急いで教科書へと視線を戻し謝罪の言葉を紡げば、冗談だ、とくすくす笑う声が部屋に響く。


ふと、白いはずの教科書のページが薄いオレンジ色を帯びているのに気が付き、窓へと視線を向けた。
勉強を始めてまだそんなに時間は経って無いと思っていたが、時計の針は最後に確認した時刻から確実に二刻程は進んでいる。




時間の流れの速さにほうっと息を吐く。
そして暫く夕焼け空を眺めた後、視線をスガタへと向けて、驚愕に双眸を見開いた。


此方をじっと見詰めるスガタの髪が夕陽を反射し、何色とも形容し難いどこか儚げで神秘的な色合いを醸し出している。







素直に綺麗だと、思った。
触れてみたいと、思った。


こんな気持ちは、初めてで。





次の瞬間には、無意識にスガタの髪を一房手に取っていた。


ああ触ってしまったな。と、冷静に思う。



冷静ながらも少し驚いたのはスガタの手も僕と同時に動き出し、そして僕の指がスガタの髪に触れるのと同時にスガタの指が僕の髪に触れた事だった。






「スガタ」
「タクト」

互いに、また、同時に名前を呼び合う。


なんだか、それがむず痒くて。
おかしくて。でも、涙が零れそうな程嬉しくて。






「この気持ちの解は、方程式で計算すれば解けるのかな」








ぽつりと呟いた言葉に反応したスガタが一瞬目を丸くし、そして静まり返った教室の中、二人同時に声をあげて笑った。


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他サイト様でのチャット中思い浮かんだネタ。


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