「タクト、今日これから予定が無いなら泊まっていかないか?」

稽古後、シャワーで汗を流し温泉に浸かっていると隣から声が聞こえた。


「え?明日学校だけど」
「別に、一緒に行けば良いじゃないか」
「んー…それもそっか、でも平日お誘いなんて珍しいね」


普段だと金曜日や休日に掛かる誘い。それが今日のように木曜日に掛かる事は今までで初めてだった。
首を傾げながら裏を探ろうとするタクトに、スガタは唇に人差し指を当てくすりと笑って言った。


「一緒に見たいものがあるんだ」



宿泊を了承し、風呂から上がると直ぐに晩御飯を食べる。
シンドウ邸の料理は絶品で、これだから此処に来るのはやめられない。
満面の笑みを浮かべてジャガーに向かっておかわり!と茶碗を差し出すタクトを見てタイガーとスガタは顔を見合わせ微笑んだ。


「で…見せたいものって?」

満腹、とお腹を擦りながらタクトが首を傾げる。
問いには答えずにスガタは時計を見た。現在の時刻は午後8時…良い時間帯だ。

「僕の部屋で見せるよ、じゃあ行こうか」
タイガーとジャガーに後片付けを任せリビングから出て行くスガタの後に続き、タクトも二人に礼を言ってからスガタの自室へと向かった。


見慣れた部屋に着けばスガタはベランダに一人で出て行ってしまい、仕方なくベッドに腰掛けスガタが戻るのを待つ。
主の居ない部屋に一人残されるのは少し居心地が悪い。

中々戻らないスガタに痺れを切らしタクトが声を掛けようとした瞬間、

「タクト、こっち来て」

と言う声と、カーテンの隙間から白いスガタの手が見えた。




何だろう?と不思議に思いながらもベランダへ出てみて驚く。



そこには望遠鏡が二台設置されていて、空には沢山の星が輝いていた。
何よりも(タクト自身先程まで忘れていたが)今日は満月で。

綺麗な円を描いた月が夜空を引き立てていた。




「綺麗、だね」

ぽつりと呟いた言葉に、横にいたスガタが頷く気配がして嬉しくなる。

「見せたかったものってこれの事だったんだ?」
「見せたかった、というか。今年初めての満月をタクトと一緒に見たかっただけなんだけどね」

くすくすと笑うスガタから視線を空へと移す。月を眺め望遠鏡の前に佇む二人を夜が包み込み。

そして暫くしてその影が重なり合う頃、空では流れ星がふたつ寄り添うように流れ落ちた。




―――――――――

先程Twitterでタクトbotが呟いていた「満月」について。
スガタbotもタクトbotも可愛すぎる。


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -