咄嗟に目を瞑ったスガタに、何時まで経っても思っていた通りの衝撃は訪れなかった。

緩慢な動作で目を開いてみれば、目の前は白一色と端々にちらつく赤。
それがタウバーンだと気付くのにそう時間は掛からなかった。

タクトに守られてしまった事実に苦々しく唇を噛み締めるも、心の何処かでホッとする。


そうしたスガタの安堵感も、続くワコの悲鳴に掻き消された。



「タ、クト君っ!タクト君っ、大丈夫なの!?」
「ワコ…?」

悲痛に顔を歪めタウバーンに向けて声を張り上げるワコを首を傾げ見つめると、彼女は震える指でタウバーンの左腕を指差した。



――…正しくは、左腕が存在した場所。


スガタが目を向ければ、其処には左腕は無く、下方に視線を落としていくと無造作に地面に、スターソードと共に転がっている左腕があった。




タクトは無傷だとばかり思っていたスガタは絶句する。

きっとスガタを守るため己の事など少しも考えず飛び出したのだろう。
彼女は優しい。それ故に自分より他人を優先する。

―――その結果、自分は守られ傷付く必要のなかった君が傷付くのだ。

片膝を付くタウバーンを凝視し、拳を握り締め、そしてその手をゆっくりと掲げる。


今力を使わなくて、何時使うんだ。自分を納得させ第一フェーズを発動させようとした瞬間、

「スガタ、駄目、だよ。」


と言う声と共にタウバーンが動き出し、右手に持ったスターソードを微動だにしないページェントへ突き刺す。
瞬間、ページェントが炎に包まれた。


タクトの声に最悪の結果にだけはなっていない事が判明し、肩の力を少しだけ抜いてタウバーンの後ろ姿を眺めていると、何時もと同じ、引き戻される感覚。



戦闘が終わるとゼロ時間も終わる。


自分の所為だと解っていてもタクトの無事を祈りながら、現実空間に帰るべくスガタは目蓋を臥せた。










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