本調子でないタクトを無理矢理屋敷に泊める事にしたスガタは、テキパキと寮に電話を入れ外泊の手続きを取る。
勿論正規では無いがこの際構って居られない。
寧ろタクトも普段正規の手続きなど取って居なかったから大丈夫だろう。いつも使用している客間に寝かせたままの彼女を想い目を臥せた。



そして夜。

軽い夕飯を取った後直ぐにタクトの体調など気にもせず、無情にも世界の時間は停止する。

――…ゼロ時間か。

認識した瞬間目の前の景色が変わり、同じくゼロ時間へ呼ばれたワコが心配そうに此方を見詰めてくる。


「スガタ君、タクト君は?」
「…余り良い状態とは言えないな。出来れば闘わせるのは避けたい、けれど…そうも言ってられ無いようだな」

前を見据え立ち尽くすタクトを見ながら眉間に皺を寄せる。
敵のサイバディ…何度か見た、僕が一度乗った事のあるページェント。此方の都合を全く考えず、遠慮無く現れるサイバディに舌打ちする。

敵の姿を視認したと同時にタクトもタウバーンを喚ぶ。そんな本調子では無い、先程までのタクトを思い小さく唇を噛んだ。


無理はするな、と小さく呟くとワコが隣で苦笑する気配がした。首を傾げながら隣へ視線を移せば、ワコと目が合う。

「私達が幾ら無理しないでって言っても、タクト君は無理、するんだろうね」
同意する様スガタも苦笑しながら頷く。
「それがタクトの良い所であり、悪い所でもあるな」
そうだね、と頷くワコに少しだけ心が軽くなった気がした。




タウバーンに乗り敵のサイバディを見据え、タクトは小さく溜息を吐く。

今まで体調の悪さを隠していたのに、遂にバレてしまった。
散々悩んだ末に登校という選択をした、確実に自分のミスだ。

…――心配、掛けちゃったよな。
ちらりとワコとスガタを見れば二人は苦笑交じりに僕、というよりもタウバーンを眺めて何か会話をしているようだった。
幼なじみで、許婚同士で。本当に自分が入る隙間も無いくらいに。
「矢っ張り、仲良いなあ。」
独り言を呟けば、スガタ達から視線をページェントに戻し戦闘の事だけを考える。


スターソードを構え突進してくるページェントに、同じく自身の胸元を叩きスターソードを二本構えたタクトが迎え撃つ。
状況は、今のところタクトが有利。このまま行けばそう支障無く敵のサイバディを破壊する事は出来るだろう。

安堵の息を吐いた瞬間、ワコの悲鳴が響く。


「スガタ君、危ないっ!」


スガタを目前に、ページェントのスターソードが迫っていた。








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