授業中、不意に窓側の席に座るタクトへと視線を向けて少し驚く。
その視線の先には髪の毛と同じ朱色のフレームが付いた眼鏡を掛け退屈そうに頬杖を付き噛み殺しきれなかった欠伸を漏らすタクトが居た。

3ヶ月程行動を共にしていても、初めて見るタクトの眼鏡姿にどきりとする。

シンプルな縁付きタイプの眼鏡を掛けた彼は普段よりもシャープな印象を放っていた。
何より言い表せ無い色気のような物が醸し出されていて、何となく繊細な硝子細工にも見える。



――正直眼鏡ひとつであれだけ変わるとは思わなかった。

スガタは一度視線を教科書へと戻し、ぼうっと文字の羅列を眺め真面目に授業を受けているフリをする。




頭の中は彼の事で100%埋まったまま。思考を遮るような授業終了のチャイムと同時に教室内が慌ただしくなる。


ああ、さっきのが今日最後の授業だったのか。

ろくに時間割りすら確認していなかった、いや、確認していたとしてもきっと。


彼の姿に心奪われていたに違い無いけれど。



「レンズ越しに見る世界は、何か違って見えるのかな」

独り小さく呟いた声は誰にも届かず騒音に掻き消された。


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