俺兄だけど弟にレイプされた



所、祓魔塾。本日の授業はすべて終了し、塾生はみんな帰路についたが教室には二人、人が残っている。片や学力不振の奥村くん。片や成績優秀の勝呂くん。燐は勝呂の席の前を陣取りプリントとシャーペン片手にあれやこれやと質問している。勝呂は偏頭痛を悪化させながらも丁寧に根気良く勉強を教えている。教えられている当人はといえば、勝呂の講義を聞いているひと時だけは秀才気分を味わっているのだが問題を自力で解くとなるとフリーズしてしまう。そんなできの悪い生徒に青筋を立てて先生が関西弁でキレる。このやりとりを何度かくりかえした後、ようやくノルマを達成した燐。一息つく二人だが、燐は唐突に勝呂に声をかける。
「なあ勝呂聞いて」
「あ、なんや急に」
「掘られた」
一瞬固まる勝呂。
「(掘られた?ああ、壁に穴でもあけられたんか・・・確かにこいつらの住んどる寮ボロっちいもんな・・・)大丈夫か?」
勝呂は壁を心配して尋ねる。しかし燐は落ち込んだ、いや青ざめた顔で答えた。
「死にたい」
「うえっ?!なんでや!なんでそんなしょうもないことで・・・」
「しょうもない?しょうもない?!しょうもなくねーよ!!全然しょうもあるよ!!」
バンッ!と机に手を突いて立ち上がった燐の目には涙が見えた気がした。というか既に半泣きである。燐の剣幕に押される勝呂。
「す、すまん・・・まあ落ち着き。詳しく聞かせろや」
勝呂になだめられ、ぐすんと鼻をすすりながらすごすごと席に座る。聞き上手の勝呂は燐を促す。次に彼の口から出てくる言葉が自分の神経をいかにすり減らすこととなるかも知らずに・・・。
「や、それがさ・・・食事中に雪男と猥談になってそのまま勢いで押し倒されて掘られた」
「『掘られた』てそっちかいいいいいいいいいいい!!!」
バシィ!!綺麗な音を立てて、しかし痛みは最小限という理想的な手のひらの使い方で燐の頭に鉄槌を下す。燐はいってえと頭をさする。
「そーだよそれ以外になにがあるんだよ」
「普通はソレ以外やっちゅうねん!!てか奥村先生なにしとんの、メシ食いながら猥談てどうなっとんねん!!アホか!!」
はーはーと一息に言い切る。そんな勝呂をみていくらか余裕が出てきたのか、燐は不敵に笑う。
「まあ聞けよ」




昨日の晩、雪男はめずらしく任務が入らず兄弟水入らずの夕食となった。メニューは鮭のアルミホイル包み、わかめと豆腐の味噌汁、白菜の浅漬けに炊き立ての秋田米である。任務も無く、兄の料理を存分に堪能できるということで雪男は大層ご満悦であった。なにが言いたいかというと、この後の燐の一言がなければ、雪男は心穏やかに兄とほのぼの食卓を楽しめたのである。
「雪男ーお前のスペース掃除してたらさ、なんか変なDVD出てきたんだけど」
「DVD?」
ポリ、と白菜の浅漬けをかじり聞き返した。燐は立ち上がりドタドタと机のほうへ。
「うん。ちょっと待ってろよー」
「(DVD・・・なんかあったっけ。・・・!!!ま、まさか・・・)」
思い当たる節があったのか、冷や汗が雪男のこめかみを伝う。別に見られてこまるものではないが・・・
「ほらコレコレ」
戻ってきた燐の手にあったのは『超絶☆女優の最高テク五十連発!』けばけばしい色とやたらピンクのパッケージ。「これ超オススメ!」と言ってシュラが雪男にプレゼントしたものだ。
「・・・・やっぱりそれか」
嘆息しながら鮭を口に運ぶ、バターの加減が最適で実に美味であった。
「これAV?お前こんなの見るんだなー」
「僕のじゃないよ。シュラさんが無理矢理押し付けてきたんだ」
「え、そうなのか?ちぇーつまんねーのー」
口を尖らせてぶーぶー言いながらDVDのパッケージをパカパカと開け閉めする。燐にはやくご飯食べちゃいなよとは言うものの、AVについての議論をやめる気はないらしい。
「見たけどなかなか興味深かった」
「お、どんな内容?」
味噌汁をすすりながら興味津々といった風に身を乗り出す。尻尾も機嫌よさそうに左右に振れている。そんな兄を見て雪男は顔色を変えずに淡々と語りだす。
「男の人が攻められる内容。なんか潮吹きさせられてたね」
「しおふき?ってなんだ?」
「僕も詳しくは知らないよ。ただ前立腺を刺激していたから精液だと思う。色がほぼ透明だったからガマン汁と同じかな」
あ、でも尿かもしれないね。刺激によって尿意が早まったりするのかも。ちょっと調べてみようかな、とかなんとか一人で言っている雪男を見て燐は一人ショックを受けていた。
「・・・・・なんか」
「何?」
「雪男の口からガマン汁なんて言葉が出るとは・・・大人になったな雪男」
どこか遠い目で雪男を見ながら白米をかきこむ燐。なかなかの炊き加減。水の量が適切だったのかもしれない。雪男は燐の視線を受け、若干釈然としない風に言い返した。
「むしろ僕は義務教育を途中放棄した兄さんが射精やら生理的機能のメカニズムをちゃんと理解しているのか気になるね」
保健の授業も大切なんだよ?と説きながら味噌汁のわかめを咀嚼する。雪男がわかめを調理しようとするといつも量を測りかね、大量に水に入れて戻してしまうのだ。彼の料理センスはきっと燐がぜんぶ持って行ってしまったのだろう。
「ばかやろーそのへんはジジイのエロ本くすねてたから大丈夫ですー」
「ホントかな?僕心配なんだよ。しっかりと教育の場で性教育を受けていない兄さんが社会に出て交際相手を持ったとして、ベッドの相手できるのかなって」
意外とズバズバ切ってくる雪男に燐も押される。
「んな!!しっつれいだなお前!そーいう雪男こそ童貞丸出しのくせに」
「知識は十二分にありますから、不測の事態にも対処できます。ほら」
そういって雪男がポケットから取り出したのは避妊具、いわゆるコンドームというやつであった。持っていたとして食卓に持ち込むのはいかがなものか雪男君。
「・・・・おまえそれゴム・・・」
流石の燐も弟の用意周到振りには引き気味である。それもそうだろう、まさか常にポケットに入れていたなんて。ということは塾に初めて行った日も、そこで銃を突きつけられたときも、父について語ったときも、訓練生合宿のときもずっと持っていたのだろうか。
「男性なら携帯しておくのは常識だよ。まさか兄さん持ってないの?」
明らかに馬鹿にした態度の雪男。引きながらも苛々する燐。それでも箸は止めない二人。
「お前にとっての不測の事態ってなに?!いきなりベッドインしちゃうことを言うわけ?!」
「はあ、うるさいなあ・・・ごちそうさま」
「おう、おそまつさま!・・・じゃなくて!!」
早々に夕飯を食べ終えた雪男。いつもどおり丁寧に挨拶をして立ち上がる。燐はまだ食べ終えていない。というか話し自体終わってない。しかし次に雪男が切り出した話はこの話題を強制的に終わらせるほどの破壊力を持っていた。
「そうそう兄さん、さっきのAVの話だけど」
「あ?」
「男性の潮吹きってすごく気持ち良いんだって」
・・・・・・いきなりなに?いや、このDVD見てたら思い出したから。ふーん・・・
「気持ちいいって、どんくらい?」
「立てなくなるくらい」
DVDを手にとってくるくる回しながら答える雪男。どうやら冗談では無さそうだ。燐はごくりと唾を飲んで問う。
「・・・・・それどこ情報?」
「体験談ですがなにか」
「うええええええ!!??!」
まじでまじで!相手誰よシュラ?それとも別の女?!あ、もしかして自分でやったのか?どうだったどんなかんじ?てかどうやったらしおふきってやつできんの?うわーお兄ちゃんの知らない間に雪男君がすっかり男の子になっちゃってもう感動だわ!明日は赤飯だなこりゃ!大興奮の燐。もうコンドームの話とかすごくどうでもよくなっているのは明白である。だから、燐は気づけなかった。雪男が妖しい目で背後に迫っていたことに・・・
「ねえ、兄さん」
燐の肩に手をかけ、耳元でささやくように言う。

「やってみる?潮吹き」


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「というわけだ」
疲労困憊、その言葉が今の勝呂には相応しい。こんなに聞いていて疲れる話は今までなかった。すごく疲れたもう帰って志摩と子猫丸に癒されたい。
「・・・・・・・」
「どうした、勝呂」
「ツッコミどころ多すぎて処理しきれん」
机に突っ伏して、いつもの覇気が見られない勝呂。そんな彼に追い討ちをかけるように言う。
「そうか。処理って言えば、後処理はぜんぶ雪男がやって・・・」
「もうソッチの情報いらん!!」
くわっ!と燐の話を遮る燐。そうか、素直に引き下がる燐。ぐぐーと伸びをする。
「いや〜なんか話したらスッキリしたわ!あんがとな勝呂」
「俺はこの行き場の無い思いをどうしたらええんや・・・」
勉強会をしていたはずなのにとんだ爆弾を投下され、頭を抱える。
「まあ墓まで持っていけよ」
「重い!!ホンマはめっちゃ軽いはずやのになんか重いわ!!」
うがあああ!叫びだしたくなる衝動に襲われる。哀れ勝呂君、彼の不幸は今に始まったことではないがな。そんな彼を横目に切り出す燐。
「で、結局キモチよかったかキモチよくなかったかというと」
「・・・・」
「立てなくなるくらいキモチよかったです」
「・・・・さよか」
もう疲れた・・・勉強道具を片付け、鞄に押し込んで帰宅準備を始めた勝呂は気づけなかった。獣のような目で迫る燐に。
「というわけで勝呂君」
すっ、と後ろから回された腕。勝呂の首下で手が絡まり、燐の息遣いが耳元に聞こえる。やばい・・・一瞬でいろいろな想像をしてしまった勝呂はぎこちない動作で視線を背後に居るであろう燐に向けた。

「やってみる?潮吹き」




2011/5/5
見事燐ちゃんに陥落させられた勝呂くんは翌日志摩君に同じ話をしてしまうことでしょう。そして志摩君はこの話を雪男さんに嬉々として語り・・・という無限ループとか考えてる。雪→燐→勝→志→雪→略ですね!ですね!
こどもの日になにやってんのお前という声が聞こえる・・・!
この話はですね、某板のやつを雪燐で考えたらぜんぜん苦しくなかったという実体験に基づいて製作されて・・・こらこら唾を吐くのをやめなさい。
本番はねえよ!あるのはオッサン×オッサンのスレだけだ

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