やはり、学校は休むべきだったか。
そう思わざるを得ない程にカカオ臭が酷い。
甘いものは嫌いではないが、ここまで多ければ暫く見ることさえ嫌になるだろう。
北一時代からのことだから、ある程度慣れはしたが、やはりこれを耐えるのは少々無理がある。
そうため息を吐きながら階段を上り終えると、見知らぬ女子生徒に声をかけられた。
「あ、神木くん!この間はありがとうね」
もう要らないよ、どう消費すれば良いんだよ。
そんなことを思いながら、差し出されたチョコを受け取る。
はぁ、と再度ため息を吐いて教室に向かおうと歩き出すと何かにぶつかった。
痛い。
違う、ごめんなさい。
ぶつかった場所を押さえながら、ぶつかった“もの”を見上げると超絶不機嫌な顔をした王様だった。
「どうしたの、機嫌悪いね」
そういえば、今日王様に会ったのはこれが初めてかも知れない。
「…………」
今日会うのが初めてならば、毎年の如くせがまれるのだろうと思って持ってきていたチョコがあるのだが、紙袋と鞄の中にも入っているチョコの所為で取り出せない。
仕方ない、と取り出すことを諦めてシワが刻まれた眉間をペチリと叩き、昼休みと言えば、待てない、とでも言うように不満げな顔をする。
本当に分かりやすくて面白いと思う朝の出来事。
Happy Valentine.
20130217
影山バレンタイン2013