首筋のキスマーク



友情<BLD


“おはよう”と声をかけられよう、と返せばニカッと笑顔が輝いたため、今日もいい笑顔だなと告げる。
自転車で烏野まで走るそいつに届いたかどうかは定かではないが片手を上げたのを見ると聞こえたらしい。
そんないつも通りの朝を過ごして店内に戻る。

そいつ、神木アルとの登下校時の挨拶と昼食は、最早平日の日課となっていた。
携帯で時間を確認して新聞を開く。あと約五時間後に昼食を食いに来るだろう。
昼時には烏野の生徒で賑わうため、話すどころか見付けることも困難である事を神木も分かっているから少し時間をずらして来ている。

前に手伝ってもらったこともあったが、神木見たさの女子生徒が大量に来たことを根に持っているようでそれの発覚以来手伝っていない。
見かけによらずそうとうショックだったようだ。

煙草に火を付けながら、神木がそこそこ顔は良いのに彼女居ない歴=年齢であることを疑問に思う。
イケメン過ぎて近付き難い、ということか今そんなことにうつつを抜かしている暇はない、ということかもしくは両方か。
いや、別にイケメン“過ぎる”というわけではなく、むしろ残念過ぎることに原因がありそうだ。
そこそこ顔が良くても発言があれじゃイケメン感より残念感の方が勝る。

「やあ、お兄さん。そんな難しい顔して何の記事読んでんの」

あいつ残念だもんなぁ、何かこう滲み出てくる残念感があると頭の中で残念なやつと連呼していると、片手を上げて声を掛けてきた残念なやつもとい神木が店内に居た。
もう昼休みの時間か。道理で騒がしいわけだ。

いや、俺会計とか全くしてねぇぞ。どういうことだ。
商品棚を見れば売れている形跡もないことに安心しながら、こいつが昼休み早々に坂ノ下に来ていることに首を傾げる。

「どうかしました?」

そんな俺を不思議に思ったのか神木が首を傾げる。
その目にはくっきりと俺が映っていたことに驚き、思わず視線を反らす。こんなに真っ直ぐに見られたことは今まで一度もない。

「お前がこんな時間に来るなんて珍しいと思ってな」

何かあったかと続ければ、数回まばたきしてからいえ特に何もと返って来たあと妙な沈黙が続き何とはなしに気まずくなる。
そんな空気をぶち破るかの如く、お兄さーんと会計を待つ生徒達の声に返事をして会計を済ましていく。

それをぼーっと見ていた神木に、やることがないなら手伝えと言ったのだが、どうやらその声は届かなかったらしい。
よく見れば何かを熱心に見ているようで、手伝わせることを諦め客(学生)の相手に戻ると背後からパシャリというシャッター音がする。

「おい、神木。お前今何撮った」

振り返り睨み付けるとにへらと笑いさらりと言ったことに思わず言葉を失った。


この間付けたキスマークですよ!
(この間っていつだ、てか何やってんだお前は!)
20140430

首筋のキスマーク




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