キグルミのおもい。



※キグルミが前作の主人公だったらいいな、と思いながら書いた話です。






最近、ブラッドの副隊長……いや、隊長の顔色が優れない。
そういえば、ジュリウスとやらも見かけない。
フライアで何かあったのだろうか。

その理由を何も知らない、と言えば嘘になるだろう。
コウタやエリナがブラッドの隊員が一人亡くなったと言っていたのを聞いた。

ジュリウスを見かけなくなったのはその後からだ。
しかし、亡くなった隊員は彼ではなく、ロミオだったらしい。
ラウンジでコウタと楽しげに話していたことを覚えている。

ジュリウスは技術者側に回ったらしい。
事実、彼の技術者としての才能は高いようで、動かなかった神機兵がしっかり動くようになった。
しかし、彼ほどの腕前の人間が戦闘から身を引くなど、何かあったに違いない。

ソーマも父の後を継ぎ、科学者の見習いをやっているが、人員不足を嘆くゴッドイーターとしての活動をしながらだ。

彼もソーマと同じく、隊の古参であるはずで主戦力の一人と考えられる。
それが、何故。


最近、ブラッドの新しい隊長の顔色が優れない。

自分と違い、前隊長の代わりとしてではなく、彼にならば命を預ける事が出来る、と望まれて隊長となったのに。
彼になら付いていく、支え合えるという仲間の意思で隊長となったのに。

リーダー格の人間がいきなり居なくなれば立て直すのに時間がかかるのは当然のはずなのに、彼の周りの仲間達は、まるで初めから彼がその立場であったかのように崩れはしなかった。

リンドウの存在感とジュリウスの存在感は全く違った、ということなのだろうか。
確かに、周りを惹き付けて振り回すリンドウと"隊長"として規律正しくあったジュリウスとでは比べられはしないが、その中身は、人間性は、付いていくべきだと思うような所はなかったのだろうか。

己の、上官として。


最近、ブラッドの隊長の顔色が優れない。

それもこれも全て赤い雨の所為。
北の集落の者を助けるために犠牲となった者が居るから。
その時に、自分が居れば、駆け付けることが出来れば救うことが出来たかも知れない命。
分厚いキグルミを着ている己ならば、そこまで期待されていない自分ならば、赤い雨が染みようが黒蛛病になろうが、飛び出すことも、出来たのに。

深い後悔の下、彼を励まそうとしてみても、空回るだけで。


最近、彼の顔色が悪い。

ブラッドの神機使いの被害者は二人。
武器を持てぬ大勢の為に亡くなった若き少年と、抜けた隊員の穴埋めを任された、今のブラッドの隊長。

ああ、神機使いとなった瞬間に、もうこの世界の被害者であることを忘れていた。

自分が配属された三年前よりも格段に、人が、死んでいる。
確かに人口は増えたかも知れない。しかしそれは、ゴッドイーター達への負担が増えるということで。
三年でゴッドイーターも増えたがアラガミも増えた。
三年前まで新型と言われていた自分達ももう旧型で、旧型神機使いには倒せないアラガミまで出てきた。

それでも尚、ペイラー・榊は人類とアラガミの共生を考えている。
本部の者も多くのゴッドイーター達も、アラガミ殲滅と平和を取り敢えずの目標としているのに。

フェンリルは、あとどれだけの数の犠牲者を望んでいるのだろうか。
神機兵などといういつ壊れるか分からない玩具を研究し続けるのだろうか。

これは、愚かな人間への“罰”なのだろうか。


討伐対象の殲滅後、帰投用ヘリを待ちながら辺りを見回し思う。


存在する生物さえいなければ、この世界は、こんなにも美しいのに。
(ここにいる自分さえ、醜い)
20140127

キグルミのおもい。




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