まっさらの姫君 | ナノ
ロ芽生え


 ひとしきりバトルシャトーで勝負を楽しんだあと、私は7番道路を進んでいた。
 すると前方に、見慣れた三人組の男の子たちが見える。
 カルム君は真っ先に私に気づくと、手を振ってくれた。
「ポケモン勝負しようか。ティエルノとトロバのコンビにオレとナナちゃんで挑もう」
 カルム君は、研究所の一件以来、私に少しだけ心を開いてくれたように見える。…気のせいじゃなければ、嬉しいな。
「ナナちゃん、キミとお隣さんだったこと思い出したから、組んでみたんだ」
 なんだそれだけかぁ、と少し残念な気持ちと、何を期待していたんだろう、という気持ちがないまぜになって、私は恥ずかしくて俯く。
「どうしたんだい?ナナちゃん」
「う、ううん!やろう!ポケモン勝負!」

「うわあ…今の…いいムーブだったねえ!」
「図鑑では分からないこと…そうなんだ…なるほどです!」
 私は圧勝した相手二人組の言葉を聞きながら、カルム君の静かなガッツポーズに、ぼんやりと見惚れていた。
「カルムさんだけずるいですよー!」
「僕たちもナナシとバトルしたい!」
「えっ、えっ!?」
 トロバ君とティエルノ君のわがまま?に困惑していると、カルム君は私の肩に手を置いてニヤッと笑った。
「残念、お隣さんの特権だよ」
 触れた肌から、鼓動が伝わらないかどうかが心配になる。でも離れないで、と相反することを考えながら、私は肩に乗せられたカルム君の手に、そっと体を寄せた。

「さて…次に行けるのはコウジンタウンだな」

 あっちの洞窟から行けるよ、と指差したカルム君はいつも通りで、私と言えば、カルム君が手を離したところがやけにスースーと涼しかった。

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