まっさらの姫君 | ナノ
ロ雪融け


「おや、君たち…もしかして、ポケモンのふえを借りてきてくれたのかい?」
 私たちが頷いてポケモンのふえを渡すと、ショボンヌ城のご主人はふえをまじまじと見た。
「…うん!確かにこれで、間違いないよ」
「おじさんにしか吹けないんでしょ?」
 サナちゃんの言葉に、ショボンヌ城のご主人は、照れ臭そうに笑って、ふえを構えた。
「寝ぼけたカビゴンが襲ってくるかもしれないけど、ふえを吹いてもいいかね?」
「は、はい…いざとなったら私が戦います」
 サナちゃんを守るようにして前に立った私は、モンスターボールを構える。
「うん…手になじむね。じゃあ始めるとするかね」

「すごーい、カビゴンちゃん捕まえちゃったよ!」
 起き出したカビゴンが襲ってきた後、結局私はカビゴンを捕獲することに決めたのだ。郷愁…のようなものを感じなかったといえば、嘘になる。ただ、それだけの理由ではないことは確かだった。
「わおん、わおん!」
「あっ…」
 振り返ると、先ほどのトリミアンが嬉しそうに尻尾を振りながら吠えていた。
「私はポケモンのふえを飾っておくことしかできない。…だが、小さなころから吹いていた君は、良い音色を響かせる」
 そこには、パルファム宮殿のご主人もいた。
「私のトリミアンも、ふえの音色が好きなようだ。…もちろん私自慢のトレビアン花火の次だがね」
「あ、ああ…そうだね」
「ただ、昔の方がもっともっと良い音色だったな。ふえは預けておくから、もっともっと練習するといい」
宮殿のご主人と城のご主人はそうやり取りすると、どちらともなくふっと笑った。
そして、それぞれの居城へと帰っていく。

「今のって、仲直りのつもり?」
 きょとんとしたサナちゃんが言う。仲直りも何も、古い確執が取れた瞬間のように、私には見えた。
「やっぱり、本当は仲良くしていたかったんだね」
「とりあえずよかったよかった、だね!…さて、カビゴンちゃんが寝てた先、何が待ってると思う?」
 7番道路のその先を、私とサナちゃんは見据えた。

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