「サナ、奥から探してみるね!」 無駄に広すぎる庭園を奥まで走っていくと、植え込みの中にトリミアンの姿を見つけた。 「きゅん!」 「お願い、逃げないで!」 サナの悲痛な叫びもむなしく、トリミアンはどんどん奥へと走って行ってしまう。 「ねえねえ、ナナちゃん!助けて!」 「うん、どうしたらいい?」 「協力して、あそこのくぼみにトリミアンを追い込むの。あたしが待ち伏せするから、場所を決めちゃって!」 迷路のようになった植え込みの中で、トリミアンは右往左往して逃げ回っていた。 「サナはどこにいればいい?このへん?」 「うん、そっち行ったよ!」 サナちゃんと協力してトリミアンをじりじりと追い詰めていく。 「ねえねえナナちゃん!もう少しで追い込めそう?サナ移動した方がいい?」 「うん、今度はここにいて、くぼみを見張ってて」 「了解!」 なんとかトリミアンをくぼみに追い詰めて捕まえることに成功した私たちは、安心から大きなため息をついた。 「お疲れさま…やっと捕まったね…!」 「ありがとうサナちゃん、良い連携プレーだったよ!」 「ゆーちゃんはすごいね!ポケモンの気持ちがわかるから、こうして捕まえられたんだよね!」 私たちがチームプレーを褒め合っていると、宮殿のご主人が駆けつけてきた。それだけ、トリミアンに対する愛情は確かなのだろう。 「おー!トリミアンちゃん!愛しのトリミアンちゃん!!トリミアンと僕をトレビアンに再会させてくれたのはもしかして君アンド君…?」 …前言撤回。ひたすらにうるさいです、この人。 「トレビアン!素晴らしい実に素晴らしい!」 素晴らしいの連呼に、なんだかデジャヴだな…と思いながらも、私とサナちゃんは微妙な笑みを浮かべてトリミアンをご主人に渡した。 「こんなときは花火です!ドカドカーンと打ち上げましょう」 「えっ」 「私とポケモンの再会…つまり愛情を確かめあった記念の大花火ですぞ!」 「ええっ」 「ついでにちょっと頑張ったあなたたちの苦労もねぎらうから、バルコニーに行きなさい」 「…………」 途中からは驚くのもめんどくさくなった私は、こういう人なんだなぁ、と遠い目で庭園の銅像を眺めていた。 「…トリミアン、見つけてよかったのかな?私がポケモンだったら、あんなトレーナーはやだ!」 「そ、そうだね…」 大人の分別というものを知ってしまったから私はサナちゃんのように無邪気には言えなかったけれど、うん、私も嫌だと思う。 「でもせっかくの花火だし、めいっぱい楽しんじゃお!」 「うん、賛成!」 花火なんていつぶりだろう。カントーには花火大会って、あったのかな。もしかして、かっこいい男の子と一緒に花火に行ったりもしてたりとか… そこまで考えてから、なぜか頭に浮かんでいるのが浴衣のカルム君であることに気づいて、私は顔が熱くなるのを感じた。 「ナナちゃんったら、どうしたの?顔赤いよ?」 「ななななんでもないの!花火、サイコー!早く行こっ、ホラッ!」 「へんなナナちゃんー」 サナちゃんに怪訝そうな顔をされながらも、私はギクシャクとした動きでバルコニーに向かった。 <* | #> しおり+ もどる |