まっさらの姫君 | ナノ
ロ博士との出会い


「アサメタウンから遠路はるばるこんにちは!ボクがプラターヌ!」

 話には聞いていたけれど、実際に会うのは初めてだった。私にソルを託してくれた博士…プラターヌ博士は、カロス地方にとてもよく似合うヒゲのハンサムな男性だった。
「ポケモンとの旅は楽しいかい?いろんなポケモンに出会った?」
「は、はい!おかげさまで…」
 博士は生徒を見守るような目で私を見ると、にこにこと問いかける。博士に最初のポケモン…フォッコをもらわなければここまで来ていなかったことを思うと、少しだけ目頭が熱くなるような思いだった。
「よーし!それではさっそくキミの図鑑をチェックしちゃうよー」
 博士は軽い調子で言うと、私のポケモン図鑑を操作し始める。私は内心、いつ褒めてもらえるのかとドキドキしていた。それもそうだ、私のポケモン図鑑には、ここにくるまでの道で出会えるポケモン達は全て記録してあるのだから。
 一通り図鑑を見終わったらしいプラターヌ博士が、にこっと笑ってこちらに向き直る。
「キミにはキラメキがある!とにかくいい感じ!」
「いい感じ…ですか?」
 ふわふわとした説明がよくわからなくて、私は頭にはてなを浮かべる。
「ポケモンを託すメンバーを選ぶにあたって、一つの町から一人ずつ…そう考えていたんだよね。アサメタウンなら、知り合いのベテラントレーナーのお子さん」
 あ、カルム君のことだ、と直感で分かった。カルム君がご両親と比べられるのを何となく嫌がっていることも、同時に分かっていたから、それを聞いて私は何だか複雑な気持ちになった。
「…でも、そのときに知ったキミたちの引っ越し。そう!キミはカロス地方を知らない」
 故郷であるらしいカントー地方のこともほとんど知らないんですけどね、と言いかけた私は、すんでのところで黙る。私が記憶喪失ということは隠すようにと、おかあさんに口すっぱく言われていたからだ。
「それがグッときた、つまりグッドポイントなわけ!」
「なるほど…?」
 カロス地方を知らないことと、図鑑集めに協力することの関係性が分からなくて、私は首を傾げる。

「博士ー、サナですー」
「遅くなりました」

 サナちゃんとカルム君が、一緒に研究所に入ってくる。
 どうして二人で行動しているんだろう、と思うと、なぜか少しだけもやもやするものがあったが、そんな気持ちになる理由が分からなかった私は、軽く首を振って吹き飛ばした。
「よーし!みんなでポケモン勝負だよ!ナナシちゃんの相手はこのプラターヌがするよー」
「えっ」
 プラターヌ博士は手元のボックスからモンスターボールを三つ取り出すと、私に笑いかける。
「どうしてキミの相手がプラターヌ博士なんだよ?」
「そ、そんなの私が聞きたいよ…」
 少し不満げに言ってくるカルム君に、私は困惑する。本当にどうして、私の相手がプラターヌ博士なんだろう。
「言っておくけど、ボク強くないからねー!」
 そうしてポケモン勝負が始まった。

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