まっさらの姫君 | ナノ
ロ先輩たち


 ハクダンシティ北のいつもの散歩道を歩いていると、奥にゲートがあるのが見えた。そのゲートは、私が今の自分の実力で進んでもよいものか自信が持てず、ずっと遠巻きに見ていたものだ。
 その前に、白い服を着た二人組が何かを待つように立っている。困りごとだろうか、困りごとなら声をかけて助けてあげなければ、という気持ちに駆られて、白い服の人たちに近づく。
 白い服の一人が、こちらに気がついたようだった。
「君はフラベベというポケモンをご存知ですか?」
 突然の問いに驚いてきょとんとしていると、白服の男性は私のポケモン図鑑を手からさらって手慣れた動作で操作する。
「おおっ!ポケモン図鑑に登録されてますね!なるほど!」
「え、えっと…ありがとうございます」
 フラベベの色は四種。確かそのうちの二種は出会いにくいのだ。ここ数日、この花畑で鍛え直して知ったことだった。
「さすが博士が選んだポケモントレーナーですね」
 大げさに頷きながら言う男性に、博士?と、頭の中で疑問符が浮かぶ。
「フラベベはなんと、フェアリータイプですのよ!」
「フェアリータイプというのは最近分類されたばかりのポケモンの新しいタイプです」
 その後わけもわからないままに二人からフェアリータイプの説明を聞かされ…確かにこれまでの記憶の中には、フェアリータイプというものは存在しなかったような気がする…ぼんやりとしていると、説明が終わった。
「申し遅れましたわね」
 白服の女性が、私に向き直って上品な礼をする。
「麗しいあたくしの麗しい名前はジーナ!」
「ぼくはデクシオ。2年前プラターヌ博士からポケモンと図鑑を託された…いうなればきみたちの先輩です」
 ジーナさんにデクシオさん、と頭の中で復唱する。カロスに来てから初めて会う人ばかりで、正直すこし困惑してもいたのだ。そんな中、ポケモンを育てることは唯一の癒しだった。
「よろしければあたくしが、ポケモン研究所に案内いたしますわ!」
「あ、は…はい」
 博士が私たちに、何の用だろう。どうしよう、図鑑まだまだ埋まってない…などと考えながら、私はジーナさんのお気遣いに甘えることにした。
「レッツゴーですわ!」
 全体的にテンションの高いジーナさんに押されて、私はずっと踏み出せずにいたゲートに入る。
「ゲートを抜ければミアレシティ!さあさお進みなさい!」
 ゲートの扉を開くと、円形の街と巨大な建物群が真っ先に目を引いた。これが、カロス最大とも言われる、ミアレシティなのか。
「彼女が歩いて行った先に研究所がありますよ」
 私がこの大きな街で迷わないように、ジーナさんが先導を、デクシオさんが付き添いをしてくれている。誘導されるままに歩いていくと、他の無機質なビルとは一風変わった、お洒落な建物が見えてくる。
「この建物がプラターヌポケモン研究所、さあ入りましょ!」

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