カルム君に慰められて大方落ち着いた私は、カルム君の勧めで、気分転換にジムに挑戦してみることになった。 「勝負に挑むその表情、いいんじゃない、いいんじゃないの!初めてのジム挑戦?いいんじゃない、いいんじゃないの!」 テンションの高いビオラさんというジムリーダーの方は、カメラを構えて私をじろじろと見定める。 「負けて悔しがるのも…勝った瞬間もどちらも被写体としてサイコー!いいんじゃない、いいんじゃないの!」 私が負けるわけないんですけど、と言いたげに、ソルのモンスターボールがぐらぐらと揺れる。もちろん一番手は、ソルにお願いする予定だった。 「さあてこのビオラ、シャッターチャンスをねらうように勝利をねらっていくんだから!」 「行って、ソル!…私たちのコンビネーション、見せてやるわよ!」 結果は、タイプ相性的に、私たちの圧勝だった。ビオラさんは悔しそうにしながらも、どこか清々しげな表情で、私に虫の形を模したバッジを渡してくれた。 「いいんじゃない、いいんじゃないの!今のあなたたち、サイコー!」 ビオラさんは、笑顔で私たちに向かって、カメラを構える。激戦の後で疲れ切っているはずなのに、ソルはドヤ顔でカメラに向かって決めポーズを取っている。それを見ていると、思わず私も笑いが溢れる。 「シャッターチャンスいただきました!」 カシャリ、と音がして、私とソルはカメラに写された。 「あなたは…ううん、あなたとあなたのフォッコは、サイコーのコンビね!いいんじゃない、いいんじゃないの!」 ほら、これをどうぞ!と手渡されたのは、技マシン。どうやら、ここでの技マシンは、一度きりではなく何度も使えるらしい。…私は、故郷のことについて、断片的ではあるけれど、少しずつ思い出してきていた。 「カメラのファインダー越しで初めて気づくことがあるように、ポケモンといることで見えてくることも、たくさんあるよね」 ビオラさんは、包容力のある笑みを浮かべて、私の頭をそっと撫でる。 「そうやって、あなただけの宝物を見つければ、いいんじゃない、いいんじゃないの!」 ビオラさんは、話をそう締めくくった。 私だけの宝物。ポケモンといることで見えてくること。…例え記憶を失っても、変わらないものはあるのだろうか。 もう少しで答えに辿り着けそうな時に限って、今日も記憶の波が邪魔をする。 <* | #> しおり+ もどる |