まっさらの姫君 | ナノ
ロ開戦


「トレーナーとトレーナーの目が合うってことは…ポケモン勝負の始まりさ!」

 ハクダンの森の入り口でのこと。

 私のソルは、そんな無茶ぶりな言葉とともに現れた相手のジグザグマと、嫌々ながらに対峙していた。
 ジグザグマは野生のポケモンよりも少しレベルが高いようで、自信に満ちた目つきでソルを見下ろしていた。しかし、こちらのソルも負けてはいない。
 始まってしまったものは仕方がない。後は、全力で勝ちに行くだけだ。
「ソル、遠吠え!」
 キュオオン、とまるで私に答えるように鳴いたソルに、ジグザグマが体当たりを仕掛けてくる。
「かわして、引っかいてっ」
 ソルはジグザグマの猛進を軽々とかわすと、背後に回ってジグザグマの背中を思い切り引っかいた。ジグザグマはその痛みでうずくまり、しばらくすると、動けなくなった。
「くっ…ジグザグマ、戦闘不能!今回はお前の勝ちだな!」
 突然勝負を仕掛けてきたわりには手応えのなかった少年は、悔しげに賞金を渡してきた。
 トレーナー同士目があってしまったら、ポケモンバトル。そして、負けた方は買った方に賞金を差し出す。このルールも、忘れていたこの世の理の一つだった。
 それを思い出させてくれた少年には、ある意味感謝してもいいくらいなのかもしれない。
「ありがとうね」
「はぁ!?イヤミなやつ!」
 伝わらなくても仕方がないか、と私は苦笑いして、賞金をお財布におさめる。

 さて、ここからは…薄暗い森が、目の前に広がっていた。

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