カルム君とサナちゃんが駆けて行った後を追う。 出会いこそ驚いて怖がってしまったが、二人ともとても良い人そうだ。特にサナちゃんは、来たばかりの私にも分け隔てなく明るく接してくれる。…もっと仲良く、お友達に、なれたらいいな。 木漏れ日がきらきらと降り注ぐ小道を通り抜ける。見るもの見るもの珍しく、立ち止まってきょろきょろしたい気持ちに駆られたが、この先で自分のポケモンに会えるという期待が私の背を押した。 「ナナシさーん!こっちだよー!」 隣の街に入ると、左のほうからサナちゃんの声が聞こえた。さん付けちょっと寂しい…! 声が聞こえた方を向くと、サナちゃんとカルム君、恰幅の良い男の子と、小柄な男の子がテラスのようなところの席に腰掛けていた。 「サナたちみんなであなたのこと話してたの!ねっ、座っちゃお!」 駆け寄ると、相変わらずにこにこしたサナちゃんが私を急かす。人見知りで男の人も少し苦手な私にとっては、初対面の4人の中で唯一の女の子であるサナちゃんが心の救いだ。 「へえ…サナちゃんが言ってたとおりだねえ」 恰幅の良い男の子が、こちらを見てにかっと笑う。 「で…ナナシ、こちらにいるのがパワフルなダンスが得意なティエルノ君に、テストはいつも満点だけど控えめなトロバ君、だね」 「よろしくね、ティエルノ君、トロバ君」 「オーライ!よろしく!」 ティエルノ君というらしい恰幅の良い男の子が、テンション高めに挨拶をしてくれる。 「あのね、仲良くなるためにニックネームで呼びたいんだけど、ナナちゃんってどうかな?」 ティエルノ君が提案してくれる。そこにサナちゃんとトロバ君が加わり、話し合いが熱を持つ。だんだんニックネームの案が明後日の方向に進化していく様を聞いているのが怖い。 会ったばかりなのにみんなこんなに仲良くしようとしてくれていて、ここはとてもあったかい土地なんだなぁ、と現実逃避しながら、助けを求めにカルム君の方を見ると、苦笑いを返された。 「どう呼ばれたいのかは自分で決めなよ」 見かねたのか、カルム君が助け舟を出してくれた。 「んと…じゃあ、最初に提案してくれたナナちゃんって呼んでもらおうかな?」 それが一番無難だったし、とは、言いたくても言えない。言わない。 「ナナちゃんって呼んでいいの?」 「うん、もちろんだよ!」 「うん、ナナちゃんってニックネームぴったり!仲良くなりたいからあたしもそう呼ぶねっ」 サナちゃんがきらきらと目を輝かせてこちらを見る。やった、さん付け脱去! 「ねえねえ、はやくみんなのパートナーになるポケモンに会わせて!」 その言葉にぐっと引き込まれる。ポケモン博士にポケモンをもらって旅に出る、ということに、ずっと私は憧れていたのだ。…あれ、でもそんな話、誰に聞いたんだろう…? 記憶の糸口が見えかけた瞬間、ティエルノ君の声にかき消される。 「だよねえ!ぼくとトロバっちがポケモンと出会った時の感動、サナたちも味わってね!」 ティエルノ君が言うことによると、ティエルノ君とトロバ君はもうポケモンを持っていたらしい。いいなあ、見てみたいな!私はさっきまで一部の記憶が取り戻せそうだったのも忘れて、満面の笑みでポケモンを待つ。 ワクワクしながら見ていると、出てきたのは長い筒状の物だった。 ぱかり、と簡単にそれは開いた。 出てきたのは3つの赤い球体。 「本物の、モンスターボールだ…!」 <* | #> しおり+ もどる |