「ありがとうね、ポケモンさん。ぜったいにこのお礼をしにくるから」

 だから、またね!と大きく手を振りながら町へ帰ってゆくナナシに、ランプのポケモンも全身をつかって手を振り返す。

 ナナシを町のそばまで送ったとき、ランプのポケモンはナナシのたからものを見せてもらった。
「ここならすこしは明るいからみえやすいかな?」
 本当はナナシよりずっとずっと夜目がきくランプのポケモンは、さっきまでの暗闇の中でも周囲が見えていたのだけれど、ナナシの気遣いにポケモンは素直に喜ぶ。
 見せてもらったたからものは、真っ黒な石だった。
 光さえ吸い込まれるような闇に、ランプのポケモンはうっとりと見惚れてしまう。
「ポケモンさん、これほしい?」
 ナナシの声に我に返ったランプのポケモンは、慌てて否定の意を示そうとうでと体を揺すった。
(だって、ぼくは、石よりナナシともっといたいから)
(はじめてできたニンゲンの友だちなんだ)
(石をもらってそれでお別れだなんて、そんなのはいやだから)

(ナナシとまた会いたい)

 ランプのポケモンは、溢れ出す気持ちに涙がこぼれそうになった。
 そんな気持ちを知ってか知らずか、ナナシは「じゃあちゃんとお礼をしたいから…また来るね!」と笑った。

数日後のこと。

(ナナシはもう来ないのかな)
(ぼくのことなんかわすれてしまったのかな)

 ランプのポケモンは、夕焼けに包まれる町を見ながら、うなだれていた。はじめての友だちが去った後は、一人だった頃よりもずっとさみしい。
 …こんなことならいっそのこと、魂をもらってしまえばよかったかもしれない。なんて、ゴーストタイプらしいことを考えてしまうくらいだ。
 ランプのポケモンは俯いて、今日はもう帰ろうと町に背を向けた。

「ポケモンさん!」

 響いた声に、ランプのポケモンは弾かれたように振り返る。
 なんで、どうして、もう来てくれないと思った。たくさんの言いたいことが溢れ出したが、どうせ言ってもニンゲンのナナシには伝わらない。
 さみしかった、という気持ちと、また会えて嬉しい、という気持ちを詰め込んで、ランプのポケモンはナナシに抱きついた。

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