「ポケモンさん、よろしくね!あのね私、ナナシっていうの」

 ランプのポケモンがお供に加わってからは、とても順調だった。
 話し相手ができたことで怖さが薄れたのか、ナナシは饒舌に自分のことを語り始めた。ランプのポケモンはナナシが聞かせてくれる学校やデパートの話に上機嫌だったし、ナナシが転びそうになるとランプのポケモンが手を貸して、足元を安全なように照らしてくれた。
「あのねポケモンさん、私ね、ここには宝物を取りに来たの」
(たからもの?たからものって、ぼく知ってるよ!)
(ニンゲンはすてきなもののことをたからものってよぶんでしょ!)
(ナナシのたからものみられるの、たのしみだな)
 不思議な鳴き声を上げ得意げにくるくる回るランプのポケモンに、ナナシは明るい笑い声を上げた。
 当たり前に言葉は通じず、やりとりも噛み合わないけれど、ランプのポケモンはナナシといることに不思議と安心感を感じていた。

 ナナシたちがしばらく進むと、遠くにひときわ大きな石碑が見えてきた。
「あれが一番奥かな?」
 すっかり元気を取り戻したナナシが、石碑に向かって駆け出す。
(だめだよナナシ、明かりがないとあぶないよ!)
 ランプのポケモンは、その後を慌ててついていく。

「あった、あったよ!みて、ポケモンさん!」

 ナナシのはしゃぐ声を聞くと、ランプのポケモンもなぜだかすごく嬉しくなってしまう。

(よかったね、ナナシ)
(でもこれで、ぼくたちお別れだね)

(それはさみしいな…)

 ランプのポケモンは、さみしさを心の奥に押し込めて、ふよふよとナナシのもとに向かう。
 もうしばらくは、喜ぶナナシの声を聞いていたかったから。

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