恋の魔法ね
 ラルトスだった頃、わたしはあなたにに出会いました。
 背のひくいわたしに目線をあわせてからにっこりと笑ってくれたあなたは、まるで天使みたい。ニンゲンを見つけたらつかまる前にすぐ逃げなさい、と母に口すっぱく言われていたのも忘れて、わたしはあなたから目がはなせなくなりました。
 この気持ちをつたえたい、笑顔をかえしたい、と思っても、まだおさないわたしには、ニンゲンとのコミュニケーションのとりかたがわかりませんでした。ああ、ああ、どうして。神さまはこんなにも早くうんめいの人に合わせるのでしょうか。
 わたしはあなたに、恋をしていました。

 あなたと旅を始めて月日が経ち、私はキルリアになりました。
 進化して目線があなたと近くなったことが嬉しかったことを、今でも覚えています。
 何度も何度も私は、スカートのようにふわりと広がる白色を見せつけるように、あなたにくるくる回って見せましたね。ひらひらしてて可愛いね、と笑ってくれるあなたに、あなたの方が可愛いですよ、と何度心中で呟いたことか。
 彼女は私の気持ちを知ってか知らずか、ツインテールのように変化した緑色のあたまを優しく撫でてくれるだけでしたけど。なるほどこれが空回りね、なんて、別に言いませんよ。
 そんなあなただから、私はますます好きになりました。
 
 貴女に仲間が増え、次の街へ向かう足取りから不安が消え自信に満ち溢れる頃。私はサーナイトになりました。
 流れるようなフォルムの私の体に貴女は、サーナイトは美人さんになったねえと笑ってくれましたね。すっかり同じ高さになった目線。貴女を抱きしめて頬ずりすると、少し照れていましたっけ。
 それでも私は、貴女にこの気持ちを伝える術を持たないまま。好きです、大好きですと、何度涙を零したか分かりません。苦しい思いをたくさんして、それでも私はこの恋の終わりだけは決して望みませんでした。
 
 そして今。
 貴女に気持ちを伝える術は今も知らないままだけど、そんなのはもういいのよ、と思えるくらいの強い絆で、私たちは結ばれたのです。
 私の持つ虹色の石が輝きを放ち始めると、それに呼応するように貴女のバングルも煌いて、貴女の気持ちが心に流れ込んできます。
 貴女にも私の気持ちが届いているのかしら。…いいえ、きっと貴女は、これがなくとも私の気持ちを知っていてくれるわね。私がそうであったように。その予想通り、貴女に視線を送ると、照れくさそうな笑顔が返ってきましたね。
 未知の力が体の奥から湧き起こり、光の膜が私と貴女を包み込んで。それが砕け散ると、愛する貴女を護るため、私の姿はさらに進化を遂げているのです。
「ウエディングドレスみたい!とっても綺麗よ、サーナイト」
 貴女のその言葉に、何でも出来そうなくらい、力が湧くのは。
 ああ、これは。

恋の魔法ね
(だって私は、貴女だけの花嫁)


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小説イメージは、chayさんの「あなたに恋をしてみました」より。


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