それはチョコより甘いキス。

明日はバレンタインデー。

雑誌とにらめっこを始めて4時間が過ぎた。

「やっぱり錫也にあげるなら、綺麗なデザインの方がいいよね…?でも私、こんなの作れないし…


そんな事を呟いている間に刻一刻と時間は過ぎていく。
そして午後10時を回った頃…。

「ちょっぴり難しそうだけどこれにしようかな?」

そう言って選んだのはトリュフだった。
こんなに時間をかけたのにトリュフなのは微妙な気もしたけれど、私が上手く作れそうなのはこれくらいだった。

「えーっと材料は…」

必要そうな材料は昨日のうちに揃えていたから一安心だった。










……………………


「出来たぁっ!」

そうして完成したのはちょっぴりいびつなトリュフだった。

「なんか微妙な形…」

こんなのを完璧超人な錫也にあげていいんだろうか?
そんな事を思っていたうちに睡魔が襲ってきた。

「ふぁ……もう作りなおす時間もないし、とりあえず寝ちゃおうかな?」






翌朝。
いつものアラームの音に目が覚める。

「えっ!?もうこんな時間!?」

時計を見ると8時を過ぎていた。

「やっぱり昨日夜なべしすぎたのかなぁ…」

そんな事を言いながら急いで学校に向かっていると、同じクラスの哉太に出会った。

「お前が遅刻なんて珍しいな」

「まぁね。って!哉太がいるって事は遅刻寸前じゃん!」

「お前ってやつは、地味に失礼だぞ」

「ゴメンゴメン!じゃあ私先に行くね!」

「おぅ、じゃあな」

そして哉太を追い抜かして学校に向かった。

「ふぅ…、ギリギリセーフ」

そんな事を呟くと錫也がやってきた。

「おはよ。名前がギリギリで来るなんて珍しいな」

「まぁ今日はちょっとね」

そう言って少し誤魔化してみる。

「もしかしてオレにあげるチョコでも作ってたのか?」

「ちっ!違うよ!勉強してただけ!」

「そうか。夜更かしは良くないんだから、ほどほどにね?」

「はぁ〜い。」

そしてチャイムが鳴り、授業が始まった。
夜更かししたせいもあってか、30分経った頃から睡魔に襲われている。
そしてうとうとしていると錫也と目があった。
睡魔のせいで錫也が口パクで何かを言っていたのに、理解する事が出来なかった。


キーンコーンカーンコーン。
数回鳴ったチャイムでも起きる事はなかった。


しばらくして私は愛しい錫也の声で目が覚めた。

「そろそろ起きなさい。いつまで眠り姫になってるんだ?」

「…ん?錫也?…あれ?数学は?」

「名前が寝てる間に終わったよ。」

「じゃあ次は移動教室じゃない!?」

「今日は自習になったよ。」

「え?でも黒板に自習って書いてないよ?」

「それは名前がぐっすり寝てたからだよ。」

「え?て事は私……今日の授業ほとんど寝てたの?」

「そういう事になるな。」

「ど、どうしよ…ノートもとってないし…」

「それはオレが貸してやるよ。」

「ありがと。ていうか私今日購買なのに、時間残ってないよ……。」

「オレの弁当食べるか?」

「もちろん!」

私は錫也の弁当が大好きだ。
優しくて、温かい味。
とてもぬくもりを感じる。

昼食も食べ終わり、錫也に昼食のお礼も言ったところで私はまだ悩んでいた。
こんな不恰好なチョコで満足してくれるだろうか?
錫也に比べて料理が下手な私のチョコなんかで満足するんだろうか?
そんな思いが心の中で渦を巻いていた。

「どうした?ボーッとして。」


「考え事してただけだよ。」

「そっか。もうそろそろ授業始まるし、またな。」

「うん。」

授業が始まったのに、内容が身に入らない。
錫也にチョコを渡すべきなのかな?
でもやっぱりバレンタインデーだし、勇気を出して渡そうかな?

…うん。渡そう!
じゃないと作った意味ないもん。

今日の分の授業も終わり、気付けば放課後になっていた。

「よし名前、帰るぞ。」

「うん!」

決心を固めた私は先程よりテンションが高くなっていた。

「なんかお前、さっきより元気になってないか?」

「ん?気のせいだよ?」

「そうは見えないけどな〜。」

その時私はチョコを渡すタイミングを考えていた。
きっと寮の前が一番いいだろうと思い、寮の前で渡す事にした。
そこから寮に着くまでの時間はとても早かった。

「ねぇ、錫也?」

「なんだ?」

「あの…不恰好だけど…これ受け取って?」

そう言ってチョコを差し出す。
やっぱり見た目は不恰好で、でも愛だけは沢山詰まっている本命チョコ。

「名前…ありがとな。大事に食べたいけど、食べるのが勿体ないよ。それとこれはオレからのお礼。」



チュッ。


錫也の顔が近づいたと思うと、可愛らしいリップ音がした。











それはチョコよりいキス。









―――――――――
バレンタイン企画1作目です!

錫也で甘々は素敵だなぁ。
私が書くと素晴らしく微妙な気がするけれど……。

何はともあれいかがでしょうか?

リクエストしていただいた永峰様、ありがとうございます。
これからも私と仲良くしてやって下さい。

お持ち帰りは永峰様のみ可能です。

2011/02/13










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