05:拾われた流れ星。 「こっちです星月先生っ!」 「金久保!夜久は?」 星月先生は息を切らせながら走って向かってきた。 「とりあえず寮の椅子の上で寝かせています。」 こうして僕達は寮に向かった。 「金久保…ここだけの話だが。夜久は…姉とは違って生まれつき体が強くない。だからあいつはずっと病院で過ごしていたんだが見舞いに来るのは姉だけだった。親がしてくれた事は病院に家庭教師のようなやつを呼ぶ事だけ。勉強しかしないような毎日だったそうだ。そして姉だけ見舞いに来ていたが、いつしか姉すら拒絶しだした………と聞いている。」 「名前さんにそんな過去が…。」 星月先生から衝撃的な話を聞いているうちに双子座寮の前に来た。 「名前さん、大丈夫かな……。」 そう呟いた瞬間、衝撃的な姿を目にする。 「お、おい!!」 「え?」 「二人揃ってどうしたんです?」 「「どうして起きてるの(んだ)!?」」 「いや…なんか起きたら椅子の上だったので…。」 「まだ起きるな。倒れた後なんだぞ?」 「え…あぁ。ただの貧血ですよ?」 「貧血を甘くみるな。そこに座りなさい。俺は金久保に呼ばれて来たんだ。」 この時金久保先輩は驚きを隠せない表情だった。 「そうなんですか?金久保先輩ありがとうございま……… ガバッ。 熱がないかを確認するために手をのばそうとしていた星月先生を遮る様に、金久保先輩が私を抱き締めた。 「僕…名前さんの事凄く心配してたんだよ?心配で心配で………」 私を抱き締める金久保先輩の身体はとても温かかった。 「すみません…金久保先輩…。」 「……ゴホン。」 けど星月先生はこの雰囲気を断ち切る様にわざとらしく咳払いをした。 「いい雰囲気のところ悪いが、患者をみせてもらっていいか?」 「っ!!す、すみません星月先生……。どうぞ。」 金久保先輩はハッとなった表情で珍しく慌てていた。 「お前、顔熱いぞ。まぁ…当たり前か。」 「ほ、星月先生!!」 「まぁ怒れる元気があるなら心配ないだろう。帰ったらちゃんと薬飲むんだぞ。」 「…分かりました。」 「飲まなかったらどうなるかは自分でわかっているんだろう?」 付け足す様に星月先生はそう言った。 「………はい。今日はありがとうございました。」 「じゃあ金久保。後は頼んだぞ。」 「はい。今日は突然呼んですみませんでした。」 「これ位どうって事ない。じゃあな。」 そうして星月先生はこの場を去った。 「名前さん、本当に大丈夫?」 「はい。大丈夫です!時間が時間ですし、もう行きましょう!!!」 そう言ってバッと立つがフラついてしまう。 「大丈夫なんかじゃないんでしょ?僕がおぶって帰ってあげるよ。」 「そ、そんな!別に大丈夫です。歩けますっ!」 私は小走りにその場を立ち去ろうとする。 「ストップ!!」 「は、はいっ!」 私は反射的に止まってしまう。 「そういう子はこうして帰るしかないね。」 私はすんなりと金久保先輩にお姫様だっこをされてしまった。 「か、金久保先輩っ!私、重いですよ?」 「そんな事ないよ。」 「はぅ………。恥ずかしいです……。」 「名前さん、何だかいい香りがするね。僕の好きな香りだ。」 「た、多分シャンプーだと思います…。」 「いいね。僕好みだよ。」 きっと今私の顔は真っ赤だろう。 それはもうトマトのように。 「もう、君の寮に着いちゃったね…。心配だから部屋迄送っていいかな?」 「構いませんよ。」 こうしてあの忌々しい病のせいで倒れた私は金久保先輩のおかげで部屋に帰る事ができた。 「今日はありがとうございました。」 「いえいえ。今度からは僕の事沢山頼っていいからね?」 「はい!ご迷惑をおかけしない程度に頼らせていただきます。」 「迷惑だとか気にしなくていいからね。それじゃあまた。」 「はい。また明日。」 バタン。 「あ、薬飲まなきゃ。」 私はベッドの近くの引き出しから何錠もの薬を取り出した。 「面倒だけど…飲まないと…。」 この後、私は薬を飲み今日の事を振り返って顔を真っ赤にしながら眠りについた。 拾われた流れ星。 2011/03/30 ――――――――――― 金久保先輩に対して、ヒロインちゃんをデレさせてみました。 |