04:空から星が落ちた。 今日は弓道部の顔合わせがあった。 そこには勿論あの月子もいた。 「天文科1年、夜久月子です。今日からよろしくお願いします!」 こうして他の人達も自己紹介をしていく。 「西洋占星術科2年、金久保誉です。よろしくね。」 この先輩は長身で綺麗な青い髪をしていた。 「…む。星座科1年、宮地です。よろしくお願いします。」 む。が特徴的な彼は宮地君というらしい。 ちょっと厳しそうな人…というのが第一印象。 そして宮地君の次に私の番だった。 「宇宙科1年、夜久名前です。弓道は中学時代からやっていました、段位は4段です。よろしくお願いします!」 周りから『おぉー。』という声が飛びかう。 無論、当たり前だけど。 そして私の後にも二人程自己紹介をしていた。 「じゃあ名前さんはちょっとやってみてくれるかな?」 「はい。分かりました。」 心を鎮める。 己と向き合い、見えない光の矢をイメージし…解き放つ。 タンッ。 目を開くと的中だった。 矢はしっかりと的の真ん中に刺さっている。 「如何でしょう?」 「凄いね。流石だよ!」 そういって金久保先輩は私の頭を撫でてくれた。 「よしよし。頑張ったね。」 「あ、ありがとうございます…。」 人に頭を撫でられるのは初めてだから、つい照れてしまう。 「次は…僕がやるね。」 金久保先輩は笑顔でそう言った。 きっと私の顔は真っ赤なんだろうな。 人とこうして触れ合うのは久しぶりだから。 「金久保先輩っ!頑張って下さい。」 気付いたら先輩に応援の言葉をかけていた。 なんだか私らしくないな…。 「うん。頑張るね。」 ―――――――― 先輩の矢はとても綺麗だった。 真夏の風鈴のような…。 風が吹き抜けるようだった。 私とは違う射型…。 ……羨ましいな。 「名前さん、どうだったかな?」 「凄いですっ!尊敬しちゃいますよ!」 「名前さんに尊敬されるなんて、照れちゃうな。」 「そ、そんなっ」 この時、少しだけ金久保先輩を可愛いと思った。 こんな先輩が彼氏だったら…って何考えてるんだろ私。 数時間後、今日の部活は終了した。 私が着替え帰ろうと弓道場の前に行くと、金久保先輩がいた。 「あ、名前さん。ちょっと一緒に帰らない?」 「構いませんよ。」 こうして金久保先輩と帰る事になった。 「ねえ…良かったらメールアドレス交換しない?部活の連絡とかもあるかもしれないから。」 「は、はいっ!」 「名前さんのメールアドレス、女の子らしくて可愛いね。」 「ありがとうございますっ。」 金久保先輩は天然なのか、私の照れる事ばかり言ってくる。 「ねぇ、今日部活中に顔色悪かったけど大丈夫?」 「え?大丈夫ですよ。」 見た目通り大丈夫な訳ない。 本来なら寮にある薬を今すぐ飲まねばならないくらいだった。 「大丈夫じゃないって顔に出てるよ?」 「え?嘘っ!」 「ホント。僕が寮までおんぶしていってあげる。」 「そんなっ!悪いですよ!」 こうしておんぶしようとする先輩を避けているうちに体調が悪化した。 「危ないっ!!」 バタッ。 私が金久保先輩の腕の中に納まったところで私は意識を解き放った。 「名前さん!名前さん!?これは星月先生に連絡しないと…」 プルルル。 「なんだ?」 「あの、1年の夜久名前さんが倒れてしまって。」 「なに?それは本当か。」 「はい。」 「今すぐ行く。場所は?」 「場所は双子座寮の近くです。」 「分かった。」 こうして、弓道部初日は最悪な1日となった。 ―――――――――― 2011/03/04 |