01:そして全ては始まった。

星月学園・入学式。

薄桃色の桜が散っている。
散る桜は綺麗。
咲いている桜は嫌い。
月子の姿を見ている様だから…。

桜は春の訪れを告げるのに、秋は悲しい季節の訪れを告げる。
まるで月子と私のように。

私はいつからか、こんなに冷めた性格になっていた。
けれどいつかこの冷たさがなくなる日がくればいいと思う。
だってこのままじゃ、孤独だから。

そんな事を思いながら中庭に向かっていた。

「おいっ!そこの新入生!」

いきなり後ろから誰かに話かけられた。

「なんですか?」

「入学式始まるぞ、行かないのか?」

「もうそんな時間か…仕方ない…行かないと…」

「道は分かるのか?」

「知りません。」

「そうか。なら連れて行ってやる。」

「誰もそんなの頼んでないですが。」

「オレが連れて行くと言ったんだから、お前に拒否権はない。」

「横暴な人ですね。」

「よく言われる。」

「自覚しているなら直して下さい。」

「断る。お!もう時間もやばいし行くぞ!」

そう言って、先程現れた銀髪の先輩は私の手を引っ張っていく。

「ちょっと触らない下さいよっ!」

「こうでもしないとお前は逃げていくだろ。」

「…………。」

私はそれに反論できずに、手を引っ張られて体育館に向かっている。

なぜだかこの銀髪の先輩に会ってから、私の周りの空気が変わったような気がして…。

先程まで私の横を通り過ぎていた秋のように冷たい風は、ほのかに温かさを帯びていた。

そして動く事をやめていた私の運命の歯車は動き始めた。





して全ては始まった。
 





―――――――
2011/02/17






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