この席になってわかったこと、

財前くんはほんとによく寝る。
しかも休み時間にはヘッドホンのオプションが付く。

でもだからって友達がいないわけじゃない。
今日もクラスの男子にCDを借りていた。


部活の先輩にも憎まれ口叩くけどほんとは嫌いじゃない。
だって先輩たちが来ると嬉しそうだ。

ウザいって言うのは照れ隠し。
そう思うと財前くんが可愛く思えた。



「こら、お前テスト中になにぼーっとしとんねん」


ぱこんっ


『痛っ、何すんですか』


先生にプリントで頭を叩かれてはっと我に返った。


「抜き打ちやからって点数悪かったらシバくで」


そんな物騒なことを言うと先生は笑いながら教卓に戻って行った。

どうやら私がぼーっとしている間に数学の抜き打ちテストをすることになったみたいだ。

急いで筆箱からシャーペンを取り出してテストに取りかかる。


だけどテストを始めて数分、私は大変なことに気がついた。

そう、消しゴムがないのだ。


多分昨日家で使ったまま置いてきたようだ。


(どうしよう………)


1人でオロオロしてると隣にいた財前くんが大きなため息をついた。
どうやら私に起こっているピンチに気がついたようだ。


財前くん、きっとこいつオロオロしてウザいとか思ってるのかな……


(なんか泣きたくなってきた。)


するとまた財前くんが大きなため息をついて自分の消しゴムを先生にばれないように私の机にそっと置いてくれた。


『あ……』


ありがとうと言う前に財前くんは机に突っ伏してしまい、結局お礼も言えずじまいで私はまたテストに取りかかった。




***



授業終了のチャイムが鳴り、テストが終わった。

私はすぐさま寝ている財前くんの肩を揺すると財前くんはちょっと不機嫌そうにこちらを見た。


「…………」


『あ、あの、さっきは消しゴムありがとう
おかげですごく助かった』


「……別に、お前が消しゴム無くしたくらいで半泣きになっとるのがウザかったからやっただけや」


そう言うとぷいっと私から目をそらして財前くんはまた眠りについてしまった。

そしてそんな財前くんの耳が照れて真っ赤になっているのがわかって少し笑ってしまったのはここだけの話だ。



もう1つ付け加え、
財前くんは優しいことがわかりました。










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