「これから合宿が始まるが決して油断せずに行動すること
特に先程遅刻してきた立海のマネージャー、いいな」


「…………はい」


切原くんに認めてもらおう☆大作戦を決行してから早数十分

早速集合場所だったテニスコートに遅刻しました、てへ


勢いで突っ走ったらどうにかなるかなと思ってたんだけどどうにもならなくて着いた頃には集合場所に恐ろしく笑顔の幸村がいた。

私はきっと今日ほど自分の方向音痴をうらんだことないと思うんだ、うん。


それから大人しく立海の部員が並んでいる列の後ろに並んで幸村の恐怖に怯えていたら先に青学の手塚くんに怒られたという冒頭にいたります。


みんなの前で怒られてへこんでいるとたまたま前の方に並んでいた切原くんと目が合って思いっきり鼻で笑われました。

見返すどころか逆に馬鹿にされちゃったよ!どうしよう!

私が頭を抱えて悩んでいると白石くんが手塚くんに声をかけた。


「まぁまぁ手塚くん
七瀬さんの遅刻は俺が間違ってること教えてやれんかったのもあるわけやし今日は許してやってくれへんか?」


「白石くん……」


この人はどんだけお優しいんですか!もう後光が見えるよ!


白石くんのフォローで手塚くんも「そうだったのか、なら次回からはそのようなことがないようにするんだぞ」と言ってくれた。
手塚くんもいい人だ……

というか部長って本来はこんな感じなんだね。
立海のとこがおかしいのか、なるほど。


「大丈夫!絶対しないから!
頑張って方向音痴克服するから!」


「へえーじゃあ俺もそれ手伝っちゃおうかなあ」


「ゆゆゆゆゆゆ幸村さまぁぁぁぁっ!?」


「白石も手塚もあんまりうちのマネージャー甘やかさないでね、調子乗るから
じゃあ俺ちょっと七瀬に話あるから勝手に続けてて」


白石くんと手塚くんの優しさに感動していたのも束の間、
私は笑顔の幸村に首根っこをつかまれて退場させられた。


(七瀬さんファイトや……)

(七瀬強く生きるんだぞ……)



その後テニスコートにいたみんなが私に同情してひっそりエールを送っていたのを私は知らない。






「わぁぁあごめんなさいぃぃぃぃ
もう金輪際遅刻などいたしませんのでお許しをーーー」


「わかってないなあ七瀬は」


「はっ!まさか私黒魔術の材料にされる!?それだけはいやぁぁぁぁ」


幸村にズルズルと引きずられて施設の中に戻った私はたまたま廊下にあった椅子の幸村の隣に座らされて幸村からのイジメに恐怖でいっぱいになっていた。


怯えて意味不明なことを言う私に幸村はため息をついて「落ち着きなよ」と私のおでこにデコピンをかましてきた。こいつ本気でやってきたよ、ほんと痛い。


「落ち着いた?」


「…………ええ、とっても」


「そんなにビビらないでよ
別に遅刻のこと怒るわけじゃないから」


「え、そうなの?」


幸村の意外な言葉に私はかなり安心した。
よかった、今日が命日にならなくて済みそうだ。


「それより俺が聞きたいのはなんで白石とあんなに仲良くなったのかなんだけど」


「はい?白石くん?」


「そう、俺がいない間になにがあったわけ?」


「えーと
さっき私と切原くんが揉めてたのを止めてくれただけだよ」


「ほんとにそれだけ?」


「う、うんそれだけ」


私がそう言うと幸村は安堵したようにはぁと息を吐いた。

どうしたんだろう
幸村の様子がおかしい。
これはこれでなんか怖いんだけど。


「そんなこと急に聞いてきてどうしたの?」


「そりゃ好きな子と男が急に仲良くなってたら腹立つでしょ」


「すすすすすすす好き?」


「俺言っとくけど好きなやつしかこんなにいじめないよ
ほら、普段学校では猫かぶってるし」


幸村に不意に好きと言われて私は激しく動揺して顔が真っ赤になった。

というか愛情表現がいじめとかどんだけドSなんですか、このお方は………


「マネージャーだから交流は必要だけど白石とか特に不二とかは極力仲良くしないこと!わかった?」


「はいぃぃぃぃ!不二くん誰だか知らないけど気をつけます!!」


「さすが七瀬物分かりいいね」


ちゅ


「はわぁぁぁぁぁぁあ!?」


「ほら行くよ
早速練習始まるから」


幸村の命令に素直に答えてしまったらそれはもうにっこりと笑った幸村におでこにちゅーされた。

驚きで叫び声を上げる私をよそに幸村のやつは颯爽とテニスコートの方へと歩いて行った。

たまにこんなことされると心臓がおかしくなるから止めて欲しい。


私はドキドキとする胸を抑えながら幸村の後を追いかけた。








(そういえば赤也と揉めたって何?)
(え、それは大丈夫!任せといて!)
(不安なんだけど……)






たまに甘いのもどきを入れるとあれですな
手塚がなぜかいるっていう

110505






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